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第43回:『猫町』の奇妙な姿に酔いしれたい

こんにちは、あみのです(=^・^=)

今回の本は、萩原朔太郎の『猫町』です。私が読んだのは、またまた立東舎の「乙女の本棚」シリーズ版です。

先日、唐突に幻想的な物語が読みたくなり、だいぶ前に購入したこの本を改めて読んでみました。

ちなみに購入のきっかけは、イラストを担当しているしきみさんのイラストがもともと好きだったからです。(単純!)

購入当時、「名作を人気イラストレーターのイラストで楽しめる」というシリーズの神コンセプトにはかなり感銘を受けたことを覚えています。私が本格的に名作に興味を持ち始めたのも、このシリーズがきっかけだと思います。

幻想的でちょっと危険な「猫の町」。深夜に知らない町をぼんやりと歩くような気持ちで読んでほしい1冊です。

あらすじ(同シリーズ他作品の既刊リストより引用)

猫、猫、猫、猫、猫、猫、猫。どこを見ても猫ばかりだ。
温泉に滞留していた私は、あるとき迷子になり、見知らぬ町に辿りつくが、そこは不思議な光景が広がっていた。

感想

「猫」という生き物が象徴的なタイトル。この作品を知ったとき、「かわいくて、夢のような世界」が広がっていそうなイメージがありました。

だけど実際に読んでみると、この物語に登場する猫は、「かわいい」というよりは「不気味」という印象の方が圧倒的に強かったです。

猫、猫、猫、猫、猫、猫、猫。恐ろしいくらいの「猫」という言葉の羅列に酔ってしまう。「語り手」が見ている「幻覚」を共に体験しているような気持ち悪さ(いい意味としての)を味わうことができました。

語り手が目撃した「猫の町」の姿は、なんだか人間が見てはいけない世界を見てしまったような感覚になってしまいます。

今回再読してみて気になったのが、イラストのいたるところにいた「ネズミ」です。このネズミは薬物に溺れた「語り手」の姿なんだろうな、とふと思いました。

実際、シリーズの公式サイトに掲載されているしきみさんのコメントで、イラスト内の「ネズミ」について言及していた箇所がありました。

『猫町』なので猫に追われる立場であるネズミの姿をしたキャラクターを語り手の意識の形として描写しています。

『猫町』という物語に対するしきみさん側の解釈が、読み手である私にもしっかり伝わっていたことにとても嬉しく感じました。

文豪の美しい言葉がライトに楽しめるだけでなく、挿絵を担当したイラストレーターさんが作品をどう読んだのか、イラスト越しに伝わってくるところもシリーズの魅力のひとつではないでしょうか。

また幻想的な夜を過ごしたくなったとき、私はこの奇妙な町を再び歩きに行くと思います。

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