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第69回:これは人生のひとつの「区切り」の物語

こんにちは、あみのです。今回の本は、しめさばさんのライトノベル作品『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』の第5巻(角川スニーカー文庫)です。

noteを始める以前から読んでいた大好きなラノベシリーズのひとつ。今回が本編最終巻(ここ重要!)とのことで、吉田と沙優の物語が一旦終わってしまう寂しさもあれば、1巻に比べると2人がどう成長したのかという期待もしながら読み始めました。

そもそもこのシリーズってどんな話?どういうキャラクターが登場するの?と思った方は、下記の特設サイトを見て頂きたいです。

あらすじ(カバーより)

 半年以上一緒に暮らしたアパートを後にして、吉田と沙優は共に北海道へ向かう。「家に帰る」という目標の達成は、同時に少しだけ先延ばしにした2人の別れがやってくるということ。その前に、沙優は「高校に寄ってほしい」と呟いた。彼女が普通の女子高生ではいられなくなった、きっかけとなる事件の現場。家出して遠く離れた場所に逃げてまで、目を背けてきたことにようやく立ち向かおうとしている。沙優の背中を後押しするため、吉田は夜の学校の階段を上って‥‥‥。
「私、お髭のサラリーマンの吉田さんに出会えて良かった」
サラリーマンと家出女子高生の同居ラブコメディ、堂々の完結!

感想

3巻くらいから吉田と沙優の生活がもうすぐ終わることを予感していましたが、今回とうとうその時が訪れてしまいました…。巻頭の口絵がなんだかテレビドラマの最終回の予告編を見ているようで寂しかったです。

4巻にて沙優が家出少女となってしまった理由が明らかとされました。その理由が「親友の自殺」という衝撃的すぎるもので、最悪な出来事を機に彼女は居場所を失い、様々な男性の家を転々とする生活を選びました。

その中で偶然吉田と出会い、更には吉田のまわりにいる大人たちや同年代のバイト仲間とも出会い、沙優は素敵な仲間たちに心が救われていきます。でも、沙優の未来のために吉田との生活は長く続けることができません。いつかは別れの時がやってきます。それが今回のエピソードでした。

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現在、高校生の沙優は「大人」になるために必要なことを学ばなければならない時期です。だけど、「大人」を完全にマスターするのは吉田くらいの歳になってもできないことかもしれません。実際、私も「大人」を全然マスターできてないです。

でも、高校に通うなどして「大人」になるということを学び、時間を重ねていくことによって彼女が少しずつ「自由」になることは確かだと思います。住んでいるところは今は違うけど、近い将来は2人が再び一緒に暮らすなんて未来も考えられるのかなと、沙優の将来にわくわくしました。

また帰ってきたばかりの娘に平手打ちしたり、「あんたなんて産むんじゃなかった」と厳しい言葉を向けたりする沙優の母の行動や考えには、読んでいて胸が苦しくなりました。居場所を失い、欲望しかない男性の家を転々としているだけの沙優では、母親に勝つことはかなり難しかったのではないでしょうか。

でも、吉田というサラリーマンに「拾って」もらい、本当に「信頼」できる人たちに出会えたことによって厳しい母親とも向き合えたし、北海道で「高校生」として改めて生活するという今の彼女に必要な答えへたどり着くこともできたのだと思います。

彼女がここまで成長できたのは吉田の存在だけではありません。彼の仕事仲間の後藤さんや三島さんと過去に秘密を共有し合ったことや、バイト先であさみという新たな親友ができたことも大切な「経験」と「ヒント」になったと思います。沙優は本当に素敵な人々に出会えましたよね。

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私はこれまでこのシリーズを「沙優が居場所を見つける物語」だと思って読んでいました。でも、今回のエピソードにてこれが吉田と沙優の「年の差恋愛」の物語でもあったことに気が付きました。

別れのときの沙優からの告白。同居を通じて気付いた沙優の「特別な気持ち」を打ち明けられた吉田は戸惑いますが、今は「恋愛感情」に至っていなくても吉田が沙優と「もっと一緒にいたい」という寂しさを抱えていたことは確かでした。

誰かを好きになる気持ちは人それぞれ。しばらくは時々会うといった形にはなりそうですが、先ほども書いたような2人が再び同居する未来を私はとても見てみたいです。吉田の気持ちもちょっとは変わっていくのかな…?

本編は今回で終了ですが、後藤さんや三島さんをメインにしたスピンオフが今後出るみたいなので、彼女たちから見た吉田と沙優の関係のお話も凄く興味あります。特に三島さんが吉田を慕う姿が好きなので、2人の関係がどうなったのか気になる。また「Each Stories」のような短編集の形で、吉田と沙優のその後とかも読めたらもっと嬉しいですね!

これは「物語の終わり」ではなく、吉田と沙優という人間の人生における「ひとつの区切り」の物語だと思う。「ライトノベル」でカテゴライズするにはもったいないくらいの壮絶な「経験」の物語に出会えて、私はとても嬉しかったです。

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今回の感想を読んで頂き、ありがとうございます。巻数が少なめでまとまっているシリーズなので、今からでも手を伸ばしやすいと思います。また、しめさばさんの新たな作品も近々他社から何冊か出るそうなので、こちらも楽しみです。

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