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第14回:『あくまでも探偵は』は、理不尽な世界と戦うために必要な「優しさ」を教えてくれるミステリーだった

こんばんは、あみのです。今回の本は、如月新一さんのライト文芸作品『あくまでも探偵は』(講談社タイガ)です。『放課後の帰宅部探偵』を読んで以来、ずっと新作を待ち望んできた作家さんの新作がやっと読めたぞ!今作もキャラクターが魅力的かつ、エンタメ性の強いミステリーが大好物の私にとっては最高の1冊でした。

私のようにキャラクターが魅力的で、エンタメ性の強いミステリーを求めている人には絶対おすすめです。また、作中では理不尽な世の中の姿が何度も描かれていました。もちろんこの物語が正解だとは限りませんが、生き辛い現状を解決するヒントに何か気付くことができる作品であることは確かではないかと私は読んで思いました。

あらすじ(カバーからの引用)

「森巣、君は良い奴なのか?悪い奴なのか?」平凡な高校生の僕と、頭脳明晰で眉目秀麗な優等生・森巣。タイプの違う二人で動物の不審死事件を追いかけるうちに、僕は彼の真の顔を目撃する。その後も、ネット配信された強盗と隠された暗号、弾き語りする僕に投げ銭された百万円と不審なゾンビ、と不穏な事件が連続。この街に一体何が起こってるんだ!?令和の青春ミステリの傑作!

感想

この社会は、弱い人のためにはできていないんだ

主人公の平は、妹が車椅子で生活していることもあり、「弱者を傷つける」世の中を人一倍嫌っています。これまで車椅子で生活する妹に向けた差別や暴言を平は何度も目撃しており、そのような理不尽な社会の姿には私もとても苛立ちを感じました。

人の弱さに気付けるあなたは間違ってない。だから、優しくなりなさい

母に理不尽な世の中への不満を打ち明けた小さい頃の平は、上記のような言葉を告げられます。困っている人に気付くこと、その人を助けたいと思うことができるのは「優しい人間」であり、母からの助言をきっかけに優しさを極める彼の意欲は最大の長所だと思います。私も平の生き方はとても参考にしたいです。彼が目指すような「優しい人間」が増えれば、少しずつでも世の中の理不尽さは解消されるのではないかと思いました。

森巣も平と同様、理不尽な世の中をかなり嫌っています。弱い者いじめはもちろん、世の中に蔓延る様々な「悪」を許せない森巣ですが、一方で彼の考えには私からすると行き過ぎているのでは…?と疑問に感じる部分もありました。平を推理でサポートする良き味方であり、時々予想外の行動で平のことを惑わす一面もある、ミステリアスな森巣のキャラクターには不思議と惹かれるものがあります。

2人はは横浜の街で起こる奇妙な事件に挑んでいくうちに、あるひとりの人間の存在に辿り着きます。たとえ相手が最低な犯罪者だとしても、ひとりの「人間」として生きていく理由はあるのか?終盤での黒幕との対峙は、平と森巣の価値観の違いが大きく分かれた今作を象徴するシーンだと思います。悪人はゴミであり、世の中には必要ないと考える森巣に対し、平は悪人でも「ひとりの人間」として生きる必要があることを主張します。平のこのような主張からも持ち前の「優しさ」を感じました。

また、今作のサスペンス要素溢れる作風も前作で描かれた「日常の謎」とは違った作者の面白さが発見できました。各章の謎解きでは私も平や森巣たちの会話に参加しているようでしたし、終盤の黒幕との対峙シーンはこの強敵に平はどう立ち向かうのか凄くハラハラしました。作中に散りばめられたサブカルネタも興味深かったですね。森巣とのギクシャクした関係が続編ではどう描かれていくのかとても楽しみです!

今回も読んで頂きありがとうございます!最後に、私もこの言葉で締めたいと思います。

森巣、君は良い奴なのか?悪い奴なのか?

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