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第177回:大学時代に出会いたかった物語(真下みこと:『茜さす日に嘘を隠して』+α)

こんにちは、あみのです!
今回の本は、真下みことさんの『茜さす日に嘘を隠して』という作品です。

今作は青羽悠さんの『青く滲んだ月の行方』という作品と同一の世界観で描かれており、真下さんの作品はその女性視点のお話となっていました。

男性視点となる青羽さんの作品も読んではいるのですが、個人的には『茜さす日に~』の方が印象深かったので、今回の感想ではこちらの作品について触れたいと思います。

あらすじ

「誰かに言えるわけない」私がこう思っている時、あなたは。
若者の真実を描く感動共作!!

就活面接でうまく話せず、彼氏とも疎遠な日々に思い詰める皐月、
寂しさを埋めるため、急に人と会いたくなる衝動を抑えきれない愛衣、
自分の経験を切り売りして曲を作り、シンガーとして活動する文、
大切な友達に言えない秘密を抱えながら過ごす智子ーー
誰かに理解してほしい葛藤をひとりで抱える、"大人未満"の4人の物語。

Amazonより

感想

今作では、他人には話しにくい悩みを抱える女子大学生たちが登場しました。登場人物たちの年齢が私とも近かったので、共感できる悩みも多く感情移入もしやすい作品でした。

今作に登場した女子学生たちは、一見「友達とワイワイしていて毎日楽しそう」「夢を叶えることができていいな」と羨ましく見えてしまう子が多かったです。
しかし彼女たちの心の中を深掘りしてみると、外見からは想像できなかった悩みが次々と明らかとなりました。

ふみは歌手という夢を叶えても理想と現実の壁に悩まされていたし、愛衣や智子は男女関係なく仲の良い友達がいて素敵だなと思いきや、それぞれ身近な人間関係に苦しめられていたところがあったし、今作のいたるシーンで「どんな人にでも悩みはある」ことを強く感じられました。

印象的なエピソードが多かった中、私は就職活動が上手くいかない皐月の物語が特に心に刺さりました。
音楽業界に就職したいけど、面接が思うように進めない。また周りには既に内定を持っている子が何人もいて、焦りを感じてしまう…。
企業からの「お祈り」の連続や、自分と周りを比べてしまったことが皐月にとっての生きづらさとなっていきます。私も似た経験があるので、彼女の気持ちは痛いくらいにわかりました。

就活を進めていく中で皐月は、「友達」とは何なのかを深く考える場面に出会います。
皐月自身は仲の良い友達なんて本当はひとりもいないのではと思い込んでいました。でも実際には皐月と一緒に卒業旅行に行きたいと誘ってくれた仲間がいたし、更には就活に苦しむ皐月を応援してくれる恋人もいて、皐月は思った以上に充実した人間関係に恵まれていました。

人と関わることで今まで知らなかった世界や自分の姿が見えてくることもある。新しい人間関係を広げる挑戦も必要ですが、既に出会っている人との関わり方を見直してみることも大切にしていきたいと思えた皐月のエピソードでした。

大学生活のキラキラと痛みを切り取ったような作品集。今の私が読んでも充分良作ではありましたが、大学時代にもしこの作品があって読めていたら、また見えていた景色がちょっとでも変わっていたのかなと思いました。
現在大学生の方にはぜひ『茜さす日に嘘を隠して』だけでも読んでほしいです。今見ている景色がきっと変わる1冊になります。

+α『青く滲んだ月の行方』

こちらは先ほども書いたように、男性視点の短編集となっていました。『茜さす日に嘘を隠して』は恋愛に限らず、様々なテーマが描かれていた印象でしたが、こちらはどちらかというと恋愛にフォーカスしたエピソードが多い印象を受けました。同年代でも男女で恋愛観がかなり異なっていたのが読んでいて興味深かったですね。

真下さんの作品では脇役として登場した男子学生たちの恋愛や悩みが明かされ、新たな登場人物の気持ちを知ることによって2冊の世界観をより深く味わうことができました。最終話が大学卒業後の話となっていたので、『茜さす日に~』から通して読むと別バージョンのエンディングが見れた感じで、個人的には良かったなと思います。


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