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此見えこさんのエモくてためになる新刊を読みました。

此見このみえこさんの新作『きみは僕の夜に閃く花火だった』(スターツ出版文庫)を読みました!最近の此見さんはアンソロジー収録の短編が多かったので、完全新作となる長編を読むのは久しぶりな気がします。

今作もエモーショナルかつ、10代特有の痛々しい感情が込められた此見さんらしい内容となっていました。現在学生の読者の心に刺さるのはもちろん、かつて学生だった人も「こんな夏休みが過ごしてみたかった!」がいっぱい詰まった1冊です。

『きみは僕の夜に閃く花火だった』感想

家族から兄と比べられる日常に疲れ、夏休み中に家出を決意した陽。ふと立ち寄った田舎町でまつりという同年代の女子と出会うところから物語は始まります。

陽はまつりにひと夏限定の同居を提案され、一緒に暮らすことになります。その一方で、まつりはある人物に「復讐」がしたいと考えており、彼女の復讐に陽も協力することになります。

その物語のカギとなる復讐なのですが、はじめは元カレに向けたものだとまつりは話すものの、本当の復讐相手は元カレではなく、別にいたことが後ほど明かされていきます。

母と2人の生活がずっと続くと思っていたまつり。だけど母の彼氏との結婚と妊娠がまつりの心を締め付けます。自分よりも結婚相手や、もうすぐ産まれる妹の方が母にとって大事なんじゃないかと雲行きの怪しい家族との未来に不安を感じ始めます。それが彼女の話す「復讐」につながっていました。

まつりがひとり暮らしをしている理由や新しい家族ができた母に対する思いからは、ここまで描かれてきた天真爛漫さからは見えなかった寂しさを感じ取れました。家族とのこれからに関しては時間が解決してくれたところもありましたが、それでも陽と出会い、共に過ごした時間がまつりの心の中にあった寂しさを埋めてくれたことは大きかったのかなと思いました。

また、まつりとの生活で陽にも大きな変化がありました。まつりはインスタント食品やバイト先の弁当を食べる機会が多く、陽は健康のためにちょっとした料理を彼女に作ってあげます。それがまつりに大好評だったことから料理の楽しさに気付き、何日か続けるうちに腕も上げていきます。

今作は小さなことでも何かを続ける大切さを描いた物語でもありました。陽は料理を続けたことで、これまで彼を苦しめていた兄へのコンプレックスが気にならなくなりました。まつりとの出会いで気付いたこの才能は、これからの生活でもきっと役に立つと予感します。

何かを続ける凄さに関してはあとがきでも触れており、此見さんは小説を書き続けた自らの経験と共にこのようなことを述べていました。

それが心から好きで、頑張ることを苦に感じないのなら、それは才能だと思います。もし今、あなたがそんな「好き」を持っているなら、どうかその「好き」を大事にしてほしいです。

『きみは僕の夜に閃く花火だった』あとがきより引用

私の場合なら読書を習慣化していること、読んだ本の感想をノートに欠かさず書いていることかなと思いました。特に読書ノートは10年以上続いており、ノートを書いていることでより作品と向き合えたり、好きな本を自信を持って他人に紹介できたり、更には文章を書くこと自体も好きになったりと続けていたメリットも結構多いことに気付きました。

他はちょっと思い浮かばなかったけど、今は気付いていないだけで実は習慣化できていた何かがきっとあると思うし、今後もいろんなことを幅広く試してみて、自分にとっての楽しい・継続してみたいと思えるものを探していきたいです。

今作は此見さんの作品の中でも爽やかで明るい雰囲気の内容だったかな~と個人的には感じました。でも、ところどころで登場人物たちの心の痛みを感じる此見さんならではの要素は健在でした。学生の時にこういう感情、持ったことがあるよねが味わえる此見さんの作品、これからも読んでいこうかと思います!


最後に私が読んだ此見さんの既刊で特に好きだった作品の感想を貼っておきます!

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