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美しい和菓子と高校生の恋(仲町鹿乃子:『わたしと隣の和菓子さま』)

今回の本は、仲町鹿乃子さんの『わたしと隣の和菓子さま』(富士見L文庫)という作品です。

この本は著者・仲町さんのnoteを見て知りました。仲町さんは和菓子愛溢れる投稿が多く、どんな物語を書くのか気になり手にしてみました。

和菓子をテーマにした作品は少なくはありませんが、高校生ならではの悩みや恋愛が強く描かれているところが今作の大きな特徴かと思います。現在高校生の人は登場人物たちに感情移入しやすいと思うし、かつて高校生だった人にも懐かしさが感じられる作品です。

あらすじ

母の看病のため、学生らしい時を過ごせてこなかった慶子さんは、高校三年生を目前とした春の朝、ケーキのような甘い匂いに誘われ和菓子屋「寿々喜」に辿り着く。
 店員の青年に招かれ店内に入ると、出されたのは小さな“どら焼き”。そう、あの香りの正体はケーキではなく“和菓子”だったのだ。
 和菓子の魅力に惹かれ、お店に通い始める慶子さん。だが、進級後の新しいクラスで、慶子さんの隣の席になったのは、なんとあの和菓子屋の店員さんで……!?
 四季折々の和菓子と、ほんのり甘くじんわり優しい恋物語をどうぞ。

レーベル公式サイトより

感想

まず和菓子の美味しさだけでなく、季節ごとの芸術性にも触れていたところが非常に興味深かったです。季節ごとのモチーフにちなんだデザインやネーミングの数々に日本の四季の美しさが感じられ、「食べる」以外の和菓子の魅力を存分に味わうことができました。読むと和菓子についてもっと学びたくなる作品だと思います。

家庭の都合で高校生活を満喫できていなかった慶子けいこさんは、高校3年の始まりに同級生の「和菓子さま」と運命的な出会いをします。和菓子さまのお店に通ったり、剣道部の活動に励んだりしていくうちに、慶子さんの毎日が少しずつ色づき始めます。
メインは慶子さんと和菓子さまの恋物語でしたが、時折ミステリー風味なエピソードがあったところも私が思う「青春小説」っぽくて良きでしたね〜。

高校の3年間って、想像以上に短いものだと思います。慶子さんが和菓子さまと過ごす日々も、あっという間に過ぎていきます。

3年生となると避けて通れないのが進路の話題。和菓子さまは実家の和菓子屋を継ぐため、高校卒業後は京都にて修業がしたいと考えているそう。慶子さんは、卒業したら和菓子さまに会えなくなることに不安を感じるようになります。
私も高校時代、好きだった先輩と毎日学校で会えなくなることに寂しくなった経験があるので、慶子さんの気持ちには凄く共感しました。

はじめは和菓子さまの進路に納得できなかった慶子さんですが、彼のお店への熱い思いを知ったことで、「寂しさ」は「応援したい」気持ちへと変わっていきます。慶子さんも大好きな「寿々喜すずき」の和菓子の未来のために後継者となる和菓子さまを応援する気持ち、とても大切だと思います。

和菓子さまや剣道部の仲間と過ごした時間は、慶子さんにとって一生大切にしたい「青春」の思い出となりました。ラストでは慶子さんと和菓子さまの未来が描かれ、読んでいる私も微笑ましくなる読了感でした!

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