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地方の皆さん、本気で転出超過止める気あんの?~「地方都市の問題地図」番外編

少々スパイシーなタイトルですが、僕自身も地方都市浜松で生活および企業経営していてモヤモヤ思うことがあるもので、僕の地方創生の考え方やスタンスを明確にする上でも筆を走らせてみました。

なお、この問題そのものについては著書『新時代を生き抜く越境思考』(技術評論社)の「地方都市の問題地図」で詳しく書いていますので、是非併せてご覧ください。

1.なんていうか「現状容認」なんです

「転出超過をなんとかしたい」「若手や女性の人口流出を止めたい」
そう嘆く地域の経営者をはじめとするオトナたちや、行政の責任者・担当者は僕の観測範囲にもたくさんいます。

「ではどうやって?」を問うと「地域の魅力をPRする」「それにより、流出をとどまってもらう」「戻ってきてもらう」のような、なんていうか現状容認なヌルい答えしか返ってこないことがある。

僕は正直、ううむと思うのです。
地域に希望を持てず、東京などの大都市に出ていこうと心キメている人たちに、いくら地域の魅力を訴求したところで、「ここはいいところだよ」と言ったところで響くものかしら? 思いとどまらせるほどのパワーあるかしら?

なぜ、若手や女性がその地域から離れていくのか?

真の原因と向き合わないことには、根本的な解決にはならないでしょう。
逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ! です。
(なお、僕は個人的には一度外に出てみたほうが良いと思っている派なので、いったん流出することは問題だとは考えていません)

ちなみに、僕も生まれ故郷から流出した人間の一人です。そのエピソードのリンク貼っておきます↓

地域に対する自己肯定感(←僕、この言葉めちゃくちゃはちゃめちゃニガテ)でもって、現状容認(変わらなくていい)前提で流出をとめようとしたところで、その効果は限定的(無理ゲー)でしょう。

自己肯定感ではなく自己効力感を高める。そのために何をすべきかを考えて実践しましょうよ。
(自己肯定感と自己効力感の違いは、講演や沢渡あまねマネジメントクラブでじっくりお話ししますのでご依頼/ご登録を)

2.僕が考える地方創生3ステップ

僕は流出超過を本気で止めたいなら、次の3つのステップを踏む必要があると考えています。かつ、当社も零細企業ながら実践し始めています。言うだけの評論家にはなりたくないので。その3つとは次の通りです。

(1)東京や海外の企業相手の、高利益・高収入な仕事を増やす/誘致する
(2)地域のカルチャーやマインドを変える
(3)地域の企業が、高利益・高収入な仕事を創る

(1)東京や海外の企業相手の、高利益・高収入な仕事を増やす/誘致する

なにをさしおいても、仕事がなければ話になりません

地域に面白い仕事、やりがいのある仕事、そして正しく稼げる仕事(マルチビジネスなどグレーな仕事は除く)に就業できる機会がある

それこそが、その地域に居続けても良い/戻ってきても良い/住んでも良いと思える大前提ではないでしょうか。まずは東京頼みでも良いから地域に先進的かつ高収益・高収入な仕事を増やす
テレワークが出来たり、土日祝日休める仕事を増やす(自動車製造系の企業は(事務やマーケティング、研究開発職であっても)いまだに祝日稼働の企業も多いです。そういうのも若手や女性遠ざける要因では))。

その際、有効な選択肢は2つ。

・フルリモートワークで就業可能な東京などの高収益な企業に就職・転職する
・東京などの高収益な企業の支社を誘致する

僕の個人的な観測範囲でも、過去3年で10名以上、浜松や他の地方都市にいながらにして東京ほか他都市の高収益・高収入な企業にフルリモートワークで転職した若手や女性を知っています。彼ら、彼女たちは地域にいながらにして仕事にも待遇にも満足している様子です。

(そういえば、そのうちの何人かは「会社のお金(予算)を使えるって素敵!いろいろなチャレンジができる!」と目を輝かせていました。
無駄遣いをせよとは言いませんが、やはりお金を使って事業を回したり、学習やチャレンジをする経験は組織も人も育てますし、仕事に対するやり甲斐や面白さも増幅させます。その意味でも企業は正しくお金を使いましょう)

地方にフルリモートワークでやり甲斐をもって高収入で働くことのできる仕事を増やす/減らさない意味でも、僕はテレワークやリモートワークは大賛成派ですし、最近の「テレワーク廃止」「原則出社に戻す」風潮には反対のスタンスです。貫きます。

東京の大企業がテレワーク・リモートワークをやめてしまったら、地方に居ながらフルリモートワークやハイブリッドワークで働きたい人たちはどうなりますか? チャンスが奪われてしまいます。その結果、地方には低位安定思考、下請けマインドの地場企業しか残らなくなる
ますます東京と地方の格差が広がり、地方の人口流出が加速する。
僕は地方都市の企業経営者としても、国民の一人としてもそれを許容できない

全国の意欲的な人、能力やポテンシャルのある人とつながるためにも、東京の人たちの一方的なエゴだけ(ある意味で東京圏のムラ社会意識)で「テレワーク・リモートワーク廃止」はやめていただきたい。そう思って、これからも声を挙げていきます。企業の社会的責任を果たしましょう。

僕(当社)自身も浜松で事業展開をしていますが、顧客の9割が東京の大企業、および東京の大企業レベルの対価を気持ちよくお支払いくださる地域のカルチャー先進企業です。

僕(当社)は安売りはしませんし、東京や地域の大企業の下請けにならず、ほぼフルリモートワークかつ対等な関係で高利益体質でお仕事をすることができていますそれを原資に、地方創生のための活動にも投資し始めました。零細企業ながら、地域の意欲的な人も雇用し始めています。

また、東京の高収益企業の浜松や東三河エリアへの誘致も個人的に始めています。最近も、東京本社の成長企業を浜松に誘引し支社開設の意思決定と進出を支援しました。

引き続き、自ら率先して利益体質のビジネスモデルを回しつつ、東京などの成長企業かつ高収益・高収入の企業の誘致に力を入れていこうと思います。

その地域で働きたい人にとって、その会社が地域企業か東京や海外の企業かなんてどうでもよいのです。
まずは、心地よいカルチャー、面白い仕事、正しく稼げる仕事が地域にある。それが大事。

そして、僕(当社)自身、高利益体質になることで地域に投資する余裕も生まれました。

2022年4月には、奥浜名湖エリアに三ヶ日ワーケーションオフィスを開設。これまで浜松市街地はもちろん、東京や大阪や北海道ほか全国各地のクライアントや顧問先の皆様、大学教授や研究者などにお越しいただき、知の創造、事業創造ベースの地域活性がじわりじわり実現し始めました

2023年5月には、天竜浜名湖鉄道 浜名湖佐久米駅のネーミングライツを購入。地域への投資をはじめることもできました。ありがとうございます。

現状容認のスタンス、「自然と美味しい食べ物と酒とお祭りがあるよ」では、他都市の人たちに観光で消費されるだけで試合終了。せいぜい、従来の飲食宿泊業が儲かるくらいで終わってしまう。
やり甲斐や面白みのある、高収益、かつ、土日祝日を犠牲にしなくてもよい仕事が新たに生まれる訳でもない。

それで人口流出防げるんでしたっけ?

飲み食いお祭りはあくまでオプション。
飲み食いお祭りは添えるだけ(左手は添えるだけ)

僕は、人口流出を防ぎたいならそれで良いと思います。

流出超過を憂う地域の経営者やオトナの皆さん、あなたたちはこれまでの低位安定の下請け型ビジネスモデルから脱却する行動しています? 高収益・高収入な仕事創る努力しているんですか? 地域に飲み食いお祭り騒ぎ以外のお金落としていますか?

経済回していきましょう。

(2)地域のカルチャーやマインドを変える

東京など他都市の優良企業にフルリモートワーク/ハイブリッドワークで、あるいは現地に進出した他都市の成長企業に現地の人が流れていってしまったらどうなるか?

地場の企業はますます苦しくなるでしょうね。

そこからカルチャーやマインドを変えざるを得なくなる
よほどの山奥の田舎はさておき、地方と言っても政令指定都市や中核都市の都市部であれば徐々にカルチャーもマインドも変わっていきます
(殊に、仕事におけるカルチャーやマインドは変われるものです)

僕(当社)も、Wewillの杉浦直樹さんがリードする『挑む!中小企業プロジェクト2023』プロジェクトや、NOKIOOの小川健三さんが主宰を務める『未来型ワーク経営者勉強会』などを通じ、カルチャーやマインドを変えたい企業/変わってきた企業を今この瞬間も見ています。

ここ3年くらいで、変革に意欲的な企業が浜松および近隣都市にも増えてきたと感じています。

・東京に負けない、面白い仕事ややりがいのある仕事を地域に創っていく
・そのために、人材育成や組織開発やITなど目に見えないものに投資をする
・古い考え方の意思決定層には、変わっていただくか退陣願う
・下請けマインドから脱却し、高収益なビジネスモデルを自ら作り回すことができる
・その結果、高収益・高収入な仕事が増える

僕(当社)が主宰する『組織変革Lab』も、はじめた当初はほぼ東京の大企業の参画しかありませんでしたが、最近になって浜松市、湖西市、豊橋市、豊田市、大阪市などの企業が参画してくれるようになりました。大変嬉しく、そして誇らしく思います。

地域の企業が人材開発や組織開発やITに投資するようになった。そのカルチャーとマインドの変化に、手ごたえと効力感を感じています。
僕(当社)も全力で一緒に走り続ける覚悟です。

(3)地域の企業が、高利益・高収入な仕事を創る

こうして、地域の企業がやり甲斐があり、高利益・高収入な仕事を創ることができるようになる。下請け体質の低位安定構造から脱し、地域にいながらにして、地域の優良企業で働く選択肢が増える

ここまで来れば、地域で積極的に働きたい人、地域にとどまりたい人、地域に戻って来たくなる人、地域に移住しても良いと思える人も増えるでしょう。

僕(当社)は今年に入って、愛知県豊橋市で『あいしずHR』なるコミュニティを始動しました。豊橋の経営者、村井裕一郎さんのこのブログに僕がインスパイアされたのが発端です。

愛知と静岡に面白い仕事、高利益・高収入の仕事を創る。流出超過に歯止めをかけたい。その思いを持った、地域の大企業と中小企業の経営者や部門長クラスの有志とともに熱いディスカッションを始めています。
変わる/変える覚悟のない人は参加お断りの、本気のコミュニティです)

第一回「あいしずHR」の様子

コミュニティ活動と並行して、豊橋市および東三河エリアの新規事業創造にも関わりはじめています。一筋縄にはいかないと思いますし、時間はかかると思いますが、それでも仲間とともにやる覚悟です。

あいしずHR』の様子は、改めて記事でお伝えしたいと思います。なかなか手を動かす時間がない(苦笑)

3.おわりに

自分(僕)自身にプレッシャーをかける意味でも、地方創生および流出超過に歯止めをかけるための具体的なステップと行動を示しました。

改めて、「転出超過をなんとかしたい」「若手や女性の人口流出を止めたい」と憂う地域の経営者やオトナの皆さんに問いたいです。

本気でそう思っていますか? 本気で変わる/変える覚悟ありますか?

ぼやいているだけで行動も投資もしない人たちに、周りに何の影響力も及ぼそうとしない人たちに、低位安定構造で満足している経営者たちに地域を変えられる訳がない。

そういう人たちと時間を過ごすのは人生の時間の無駄ですから、僕は本気で地域を変えたい未来志向の人たちだけに時間を使うことにします。

心に火がついた方は、とにかくまず書籍『新時代を生き抜く越境思考』の「地方都市の問題地図」を開いて周りの皆さんと「どこから変える」「どこから変わる」をディスカッションしてみてください。

なお本件に関して僕(当社)を交えてディスカッションやQAをされたい方は、講演依頼や顧問契約いただくか、『組織変革Lab』(法人や行政機関向け)または『沢渡あまねマネジメントクラブ』(個人向け)にお越しを。