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キャリア女性にとって魅力ある雇用を用意することが最大の地方活性化施策

今日は、豊橋市を始め、一次産業、二次産業中心の地方をどうするか、そのための方策まで含めて考えてみます。カギは女性雇用創出にあります。

20歳-24歳女性が毎年200人消える東三河

木下さんのこちらの記事に詳しいですが

東京一極集中は、ズバリ、20歳-24歳女性の一極集中といって過言ではありません。愛知県、そして、私の住む東三河も例外ではないです。この問題は数年前から指摘されています。

愛知県全体は人口増なのに…若い女性、首都圏に続々転出

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特に東三河に関して言えば、1年で200人の女性が首都圏へ出て行っています。15歳~29歳まで広げれば400人近く、そして、その多くが出て行ったきり帰ってきていないことが、上記のグラフから分ります。
出典:愛知県の人口動向 愛知県まち・ひと・しごと創生総合戦略推進会議資料

その結果どうなるか

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愛知県は20-39歳で、圧倒的な「男余り」になります。特に顕著なのが豊田市、女性100人に対して男性130人。30人も男が余っている。豊橋市も女性100人に対して男性110人と、10人、男が余っています。

1年で200人、大体中学校1学年分の女性が、毎年、東三河から消えています。その結果、圧倒的な男余り社会になる。

これでは、いくら出生率を改善させても、そもそも女性の数が減っていては、その改善効果を打ち消してしまいます。


東京に出て行ってしまう女性の本音

では、なぜ、女性が出て行ってしまうのでしょうか。これは、愛知県のアンケートが参考になります。

シンプルに言えば、このアンケートは、就職で東京に出て行った愛知出身女性と、就職も愛知県内の企業に就職した愛知出身女性に、それぞれ理由を聞いています。

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見ての通りですね、東京に出て行く女性は「やりたい仕事があったから」、愛知に残った女性は「自宅から通勤したかったから」。東京に行く女性は「仕事内容」を優先し、地元に残る女性は「仕事内容よりも地元であること」を優先して選んでいるとも言えると思います。

それを裏付けるのが、このアンケートの別の質問です。

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就職時に流出した女性は「キャリアアップ思考」、地元に残る女性は「結婚出産まで働ければ良い」と言う思考です。そして、注目すべきが「キャリアアップ思考は強くないが、結婚・出産後も働き続けたかった」と考える層が東京に集中していること、これは暗に「愛知県は結婚/出産後も働き続けられない」ということを示唆していると言えます。

さらに別の質問を見てみましょう。

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女性にとっての活躍の機会、仕事の内容、職場環境、など、多くの面で、東京圏在住者が現在の環境に対して感じていることと、愛知県在住者が愛知県に感じていることに、大きな差がついていることが分ります。

これでは、「働きたい仕事」や「働き方」をベースに考えると、女性が、就職で愛知県(東三河、豊橋を含む)を出て行ってしまうのは必然と言えるのではないでしょうか。

そして、「男余り」になった職場、ひいては地域社会で、より「男性志向の文化」が強まり、そういう会社を見て、ますます女性が「働きやすそうじゃない」と考えるようになって愛知県から出て行く。そして、愛知県内の職場には「仕事の内容や、働き方よりも、地元であることが優先だった」タイプの女性が集まっていく。そのようなスパイラルが起きていることが、アンケートから推察されるのではないでしょうか。

東京と豊橋の産業構造比較

そうはいっても、魅力的な雇用とはどういうことでしょうか、ここで、東京都と豊橋市の産業別の従業員数を面積図で比較してみます。出典はRESASです。

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上が、いわゆる都心6区(千代田区、文京区、中央区、渋谷区、港区、新宿区)、下が豊橋市の産業別の従業員数です。明らかに従業者数が違う=仕事の内容が違うというのが見て取れると思います。

東京では、情報サービス業や、その他のサービス業、映像、音声、文字情報製作業などの職種が上位なのが特徴、機械器具卸はさらに小分類を除くとスマートフォンやパソコンなどの販売業になってきます。

豊橋では飲食サービス業が一番多く、医療、福祉、製造業、卸売り小売り行が多く、東京都で上位の情報サービス業や、その他のサービス業、映像、音声、文字情報製作業などの職種が少ないことが見て取れます。

明らかに、「東京にある仕事」と「豊橋にある仕事」の中身が決定的に違う、ということが読み取れます。逆に言えば、まさに、「東京では多くの従業者がいる産業であり、豊橋には従業者がいない産業」こそ、「やりたいことで流出してしまう女性が就職したいと思える仕事」といえるのではないでしょうか。

とはいうものの、ここまで違うと、「やりたい仕事で選ぶ」女性が、地元で「やりたい仕事」を探すこと自体が非常に難しい。「キャリア教育」でやりたいことを見つけたとき、それが、豊橋にない仕事だったら、東京に出て行ってしまうことを後押しすることにさえなる可能性は非常に高いです。

なぜ、行政や企業は女性のニーズを汲み取れないのか

では、なぜ、行政や企業は女性のニーズをくみ取れないのでしょうか。それは、先述のアンケートにあります。以下に書くことは、愛知県や豊橋市に限らない構造問題だと思います。

基本的に、行政は「地元に残っている女性」にアンケートを聞きます。ましてや企業は、採用した女性に聞きますから、必然的に「地元志向の強い女性」の意見を聞くことになります。

「うちの喫茶店じゃなくて、あっちのレストランに行くお客さんは、うちの何がよくなくて来ないのだろう?」という質問を、自分の喫茶店に残ってる常連客に聞くみたいな見当違いです。

先のアンケートで言えば「働く内容よりも、地元、親元から通える距離にあるか」を重視し「結婚出産ぐらいまで働ければいい」という女性の声が、「女性のニーズ」として多数派になってしまいます。

そのようなアンケートを元に打ち出される「若者定住施策」は、「まちの魅力を発信する」「まちの暮らしやすさを発信する」「まちに愛着を持ってもらう」と、「職種の内容は別にして、とにかく地元愛さえ高まれば、何の仕事でもいいから就職してもらえるだろう」という前提に基づく施策ばっかりになります。

「自分のしたい仕事が、地元にあるかどうか」が選択の優先順位にある人に対するアプローチとして、根本的にズレています。

そもそも、「暮らしやすいまち」とは「どこと比べて暮らしやすい」のでしょうか。豊橋であれば、想定しているライバル都市はどこでしょうか。東京からの定住者を呼び込むとき、豊橋と岡崎を迷ってる人なのでしょうか。豊橋と前橋を迷ってる人なのでしょうか。

公園が多い、文化施設がある、生徒あたりの先生が多い、医療費の補助が出る、保育無料、、、、色んな、そして、どんな自治体でも似たようなものがある施策群、

その施策の想定ライバルは明確でしょうか。想定ライバルは**市と、明確ですか?その想定ライバルの**市にくらべて、決定的にここが暮らしやすい、子育てしやすい、補助金が凄い、制度が凄い、圧倒的な差のある施策はありますか?

定住促進戦争を「暮らしやすさ」で戦うというのは、これが明確になっていると言うことです。

はっきりいって、レッドオーシャンです。企業だったら、こんな大量に参加者がいて、さらに差別化を打ち出しにくいマーケットでは戦いません。これらは、「既に、豊橋を住むまちとして選んだ人」にとっては重要な施策ですが、「現段階では豊橋を出て行く人、選ばない人」には別のアプローチが必要です。既存顧客への施策と、新規顧客獲得施策は異なって当然です。

やるべきアプローチは「あなたがしたい仕事は、東京じゃなくても、地元にもある」「あなたが歩みたいキャリアは、東京じゃなくても、地元で実現できる」「情報通信産業、映像音楽産業、サービス業のような仕事が地元にもある」

のアピールではないでしょうか。

キャリア志向の女性に地元に残ってもらい、人口減少を防ぐための2つのアプローチ

さて、ここまで書けば、ある程度結論が見えてきますが、キャリア志向の女性に地元に残ってもらうアプローチは2つです。今から、地方都市が情報産業で食っていくまちになるのは、無理筋です。とすれば、「製造業のまち」であることを前提にしたアプローチしかないです。

1.キャリア志向の女性の目指すキャリアを製造業ならではの職種にする

2.製造業の中にキャリア女性が好むキャリアの要素を見出しアピールする

この2つです。

1つ目は、キャリア志向の女性に「製造業にあるようなキャリア」を目指すような動機づけをするということです。これは、具体的に言えば、理系技術職を就職先、進学先として目指す女性を増やそう、ということです。つまりは、高校生ぐらいからの理系を目指す女子を増やしていくと言うことです。

これには、親も、教師も、そして、生徒自身が、「女性は数学が出来ない」「女性は重いものを持てない」「女性は機械に興味が無い」「女性は生き物が苦手(可愛いペットは別)」というような思い込みを外していくことが、まず重要になります。女の子だから商業高校で経理、みたいな思い込みを外していきます。

そして、豊橋の18歳時点での大学、短大、専門学校で、理系分野への進学が男女半々になり、地元豊橋技科大や愛知工業大なども、男女半々、研究室によっては女性が多い、みたいな研究室が、地元の製造業に近しい分野で生じるようになれば、必然的にそれらの大学で研究キャリアを積んだ女性の就職先は、製造業など技術職が活躍できる企業になり、地元企業が選択肢に入る可能性が高まり、首都圏への流出阻止に繋がります。

理系分野のジェンダーギャップ解消先進都市って、まちの魅力の打ち出し方として、かなり差別化がはっきりした戦略ではないでしょうか?

そして、豊橋に限らず、多くの地方都市が製造業中心の産業構造だと思います。「キャリア志向女子に理系職の魅力を伝え、理系キャリア女子を地元で育てる」というのは、多くのまちに転用可能かつ、地元の人材を地元で就職させるので、レッドオーシャンにならず、共有可能なアプローチではないでしょうか?

もちろん、そのためには、「製造業で活躍するキャリア女性」というのが、日頃からイメージされないといけません。まちとして、女性の技術職、機械のスペシャリストや研究のスペシャリストのロールモデルが地元で活躍していること。また、いわゆる、ワークライフバランスであり、製造業における男女共同参画の推進、技術管理職への女性登用推進などが、施策として必要になってくるでしょう。


そして、2つめの、「製造業の中にキャリア女性が好むキャリアの要素を見出しアピールする」について。これは、製造業の中にも、実は職種として分解していくと、「情報サービス業や、その他のサービス業、映像、音声、文字情報製作業などの職種」に当る仕事というのがあります。

例えば、東三河にプラスチック成形で有名な企業があります。その会社は日本のかなり多くの化粧品のパッケージを作っているのですが、そのパッケージデザインや、マーケティング、あるいは海外の化粧品メーカーに営業をかけるなら、外国語でのパンフレット作成、ホームページの作成、SNSでの情報発信など、製造業の中にもそういう職種を見出すことが出来ます。

製造業や農業の6次可や観光資源化というのは、まさに、そのような職種への雇用を大量に生み出すチャンスです。マーケティング、デザイン、通訳、広報PR、ブランディング、、、こういう職種があるということを、産業や企業の中で、仕事の流れから切り分け、雇用として発生させる。

観光業は8割が女性雇用と言われ、製造業や農業を観光資源化していくことは女性雇用の大幅増加につながります。観光業、コロナでダメージを受けていますが、逆に、この1,2年でアフターコロナでも打ち出せる観光業のあり方を地域で実践すれば、他の地域の人材を取り込めるチャンスであるとも言えます。

ところが、こういった職種を「営業事務」など、古くさい名称にして、いまいちな求人票を作ってしまうのが、地方企業のあるあるです。私の取引先の醸造メーカーでは、当初「営業事務」という募集ではほとんど募集が来なかったところ、パンフレット作成やホームページの作成、一般商材の小売店舗の管理運営などの仕事をよりフォーカスし、改めて「マーケティング補佐/ブランドマネージャー候補」という求人タイトルにしたところ、いきなり1日で東京含めて8人の応募があったという事例があります。

また、別の事例では、同じく「営業補助」だけでなく、経理業務やインターネットからの注文を捌いていく職種と言うことに着目し「ネットショップ運営」と求人タイトルに入れたところ、同じく応募が増えたという事例もあります。

もちろん、応募が増えれば、すなわち、それだけ優秀な人材を採用できるということに繋がっていきます。

こういう職種の切り出しをするには、経営者自身がマーケティングやブランディング、情報通信という職種は何を仕事とする職種なのか、その仕事のキャリアプランはどのようになるのか、キャリア志向の女性はどのような職種、そしてそれが想起できるどのような表現に「これは自分の仕事だ」と共感を感じるのか、ということを分ってないと雇用を生み出すことは出来ません。

そこは、行政担当者や、まちの企業経営者の勉強しどころです。


かなり長文になりましたが、地元への熱い想い、として、受け止めていただけたら嬉しいです。そういえば、11月は豊橋市長選、「20歳-24歳女性流出阻止施策」がどのようなものが出てくるかも、個人的な注目点の一つとして見ています。

文句言ってるけど、結構、豊橋、好きなんですよ。

最後までご覧いただきありがとうございました。 私のプロフィールについては、詳しくはこちらをご覧ください。 https://note.com/ymurai_koji/n/nc5a926632683