マガジンのカバー画像

Bar 北極星

21
今宵 涙色のカクテルをあなたに(2010)
運営しているクリエイター

記事一覧

Last Kiss

Last Kiss

桃色の唇に
一片の花

つないだ手に
寄り添わぬ心

せめて一夜の夢

接吻は
淡い檸檬の味がして

濡れた睫毛は
何を想うのか

いとしいひと

このまま
遠くへ行けたなら

Emerald Mist

Emerald Mist

今夜も不味い酒をあおって
冷たいベッドに潜りこむ

君の声が聴こえる
きっとまた空耳だろう

海の蒼には
たくさんの哀しみが
眠るという

部屋にあるのは煙草のけむり
背中を丸めて目を瞑る

君の笑顔は想い出さない
すべては幻

しめつけられるこの心さえも

Salty Dog

Salty Dog

逢えない夜を
星と過ごすのも
ようやく慣れたな

窓辺に立って
最後の煙草に
火を点ける

ウォッカの香りに
眠りは
ますます遠のいて

君への愛おしさだけが
募っていく

Moon Light

Moon Light

君に伝える言葉を持たない
想いが伝えられないもどかしさを抱いて
今夜も不味い酒を飲む

失くした言葉を見つけられずに
想いまで失くしてしまったような気持ちになる
煙草は灰皿でただ燃えている

ああ 月よ
あの人を愛していると伝えられたなら
あの人が誰かのものではないのだと

不味い酒と味気ない煙草
ネオンだけがギラギラと煩い夜

日々は苦痛でしかない
そうだろう?

Apple Jack

Apple Jack

逢いたいと願う時ほど
逢えずにいるの

夜の永さに堪えかねて
トランプの札を捲ってみる
キングは淋しい笑顔で
慰めてくれるけれど
心の穴を埋めてはくれない

月が深く頷いて
夜が更ける

逢えない夜が

Campari Rose

Campari Rose

酔いにまかせて
出せない手紙を
したためる

綴れども
届かぬ君への想い

想いは
届かないからこそ

美しい

Tequila Sunrise

Tequila Sunrise

夜更けに目を覚まして
窓辺に立つ
沈みかけた月が
俺に笑いかけるが
笑い返すことができない

扇風機が
夏の夜の空気を
シャツに絡みつかせる
風を避けて
煙草に火をつける

寝酒は
眠りによくないと知っているが
酔わずにいられるだろうか?

指先に点る
小さな火に独りごちても
なにも応えず
ただ立ち上る紫煙

白々と明ける空
グラスを呷っても
この痛みから
解放されそうにない

Lonely Night Lonely Way

Lonely Night Lonely Way

哀しい酔いが指先にまで
微かに洩れる吐息よ

窓から射す月明かりが
この想いを愛に似せてくれる

心などいらない
傍らの煙草だけでいい
そうだろう?

どんなに募っても
愛にはならない想いなら

Misty Twilight

Misty Twilight

宵待ちのあなたは
グラス片手に物思う

灰皿で燻る煙草を
見つめて

心など
此処に在って
此処にないの

Oriental

Oriental

最後の言葉を
グラスに溶かして
ライムを搾る

だけど
ふたりは明日を想う

未練が
心を包むから

Blue Margarita

Blue Margarita

グラスの縁の塩を舐めて
涙がひと粒
水面を揺らす

あなたは知らなくていい
わたしの流した涙のことなど

Spritzer

Spritzer

炭酸が
パチパチとはじけている
グラスの中で

ただ燃えている
灰皿の煙草
じっと見つめて

夜が更ける
今日もまた

Blue Moon

Blue Moon

ジュークボックスに
コインを投げ入れて
あの人の好きだった曲を

ボタンを押す指は
今だに震えて

流れはじめた曲に
そっと まぶたを閉じる
ほんのみじかい夢を見て
目覚めた頬に涙の痕

かたむけるグラスは
哀しい恋の味がして

Around the World

Around the World

恋の哀しさに酔って
唄うメロディ

思い出を抱きしめながら

遠い遠い
世界の涯てへ