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竹林のトンネルを抜けて、源氏物語の世界へ。野宮神社「源氏物語 開運招福御守り」

◆この記事を書いた人
京都外国語大学国際貢献学部グローバル観光学科一回生 西川歩奈


嵐山といえば竹林。国内はもちろん海外からの観光客も多く行き交う人気スポットで、ときおり観光客を乗せた人力車の姿も見られ、嵐山の風情に花を添えている。細く長く曲がりくねった小径の両側に、青々と繁る高く竹が聳え立つその風景はとても幻想的で、びっしりと続く竹の隙間からは木漏れ日が差し込み、どこからともなく鳥の声が遠く響いている。まるでおとぎ話の世界に迷い込んでしまったかのような奇妙な感覚に陥るのだが、この竹林をさらに奥へと進んでいった先にある野宮神社が、源氏物語にゆかりのある神社だというのも納得である。

野宮というのは、平安時代に天皇に代わって伊勢神宮の天照大神に仕えるために選ばれた未婚の皇族女性である「斎王」が、伊勢参りの際に身を清めるために滞在する「潔斎所」として定められた神聖な場所のこと。源氏物語「賢木」の巻では、斎王である娘と暮らす六条御息所を光源氏がお忍びで訪ねていく場面が描かれている。六条御息所は会いたい気持ちとは裏腹に光源氏とは会うことなく、別れを決意する印象的な場面だ。

その後、後醍醐天皇の時代に南北朝の戦乱によって斎王制度が廃絶。野宮として使われなくなった跡地に野宮神社が建てられたのだそうだ。神社の入り口にある樹皮がついたままのクヌギの原木を用いる古代の様式で作られた黒木の鳥居や、神社の周囲を囲むクロモジの小柴垣に、平安時代の雅な面影をいまに伝えている。

じつは野宮神社はいまも皇室と深いつながりがある。1994年(平成6年)2月12日に秋篠宮殿下と妃殿下の紀子様が子宝の願掛けをされるために野宮神社に参拝され、それからほどなくして佳子様を授かったという逸話が残されている。当時この様子は大きくワイドショーで報道されたこともあり、それ以降は子宝や安産のご利益を求めて訪れる参拝客が後を絶たないという。

開運招福御守り 野宮神社


さて、野宮神社のお守りのなかでおすすめしたいのが「開運招福お守り」。このお守りのご利益である開運には縁結びや子宝など総合的なご利益の意味が込められている。また、縁結びには恋愛だけでなく、人と人とを結びつける意味も込められているので、受験をひかえた修学旅行生たちや人との縁を求めて訪れる人たちにもピッタリだと思う。このお守りのデザインは、やはり源氏物語が深くかかわっていて、表には十二単を着た高貴な女性が、裏には束帯を着た貴族の男性がそれぞれ描かれている。また、このお守りの特筆すべき点は素材だ。野宮神社の「開運招福お守り」は、なんと西陣織で作られているのだ。これほどまでに繊細で美しく作られたお守りはこれまでに見たことはない。もちろんこのお守りは京都でしか作ることができない貴重なものなので、野宮神社を訪れた際にはぜひ手に入れてほしい

このように野宮神社は、古くから天皇家とのつながりや、源氏物語とのゆかりが深い。2024年の大河ドラマ「光る君へ」では源氏物語の作者である紫式部の生涯が描かれることもあり、野宮神社の注目もより一層高まることだろう。
源氏物語「賢木」の巻の冒頭で紫式部は、秋の野宮の情景を「秋の花はみなしおれて、浅茅が原も枯れがれに寂しく、弱々しくすだく虫の音に、松風が淋しく吹き添えて、なんの曲とも聞き分けられないほどに、かすかな琴の音色が絶え絶えに伝わってくるのが、言いようもなく優艶なのでした」と、その美しい筆致で記している。わたしが訪れたのもちょうど秋深い時期だったが、せっかくなら源氏物語に描かれたのと同じ、幽玄なる朝霧に包まれた秋の早朝に訪ねてみるのもいいかもしれない。

◆野宮神社 公式サイト


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