百紀夜稿

通勤などの隙間時間に手軽に読めるものを投稿。創作活動は、不思議系のもやっとした話が多め…

百紀夜稿

通勤などの隙間時間に手軽に読めるものを投稿。創作活動は、不思議系のもやっとした話が多め。朝より夜の方が仕事がはかどるタイプ。大学卒業後、CG 制作会社でマーケティングの仕事に携わる。人物やテクノロジー系のイラストが得意。

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【怖い話】手毬唄 (ショートショート)

 古びた屋敷が山深い森の中にひっそりと佇んでいた。その屋敷は、かつては豪華な邸宅だったが、今や荒廃し、誰も住む者はいない。  ある晩、その屋敷の近くを通る旅人がいた。彼はふと、不気味な雰囲気に引かれて、その屋敷を探索することにした。  屋敷の扉は錆びついており、風が吹くたびにガタガタと音を立てている。彼はゆっくりと扉を開けると、中に足を踏み入れた。中は暗く、薄暗い光が差し込んでいた。  廊下を進むと、不気味な足音が聞こえた気がした。しかし、周りを見回しても誰もいない。不

    • 【怖い話】似顔絵(ショートショート)

      良枝は窓の外から聞こえる騒音で目を覚ました。時計を一瞥し、まだ早い時間であることを確認すると、ベッドから起き上がり、そのまま部屋の隅に置かれた机に向かった。 机には開いたままのノートパソコンと使いかけのオイルパステルが散らばっている。早く起きたのは納期の迫った仕事があったからだ。ふぅと深呼吸をし、集中するために髪をひとつにまとめた。 良枝は幼い頃から絵を描くことが得意で、親の反対を押し切って東京の美術大学に進学した。卒業後はプロのイラストレーターとして独立する夢があったが

      • 【もやっとする話】赤い村(ショートショート)

        むかしむかし、ある国に赤村と青村がありました。 赤村と青村にはそれぞれ10人の村人が住んでいました。村人たちはいつも仲良くしていましたが、ある日、どちらが幸福になれるかで競争することになりました。 赤村では赤いバラを栽培して販売しました。100ゴールド儲かったので、10人の村人で平等に10ゴールドずつ分けました。 青村では青いバラを栽培して販売しました。同じく100ゴールド儲かったので、一番頑張ったリーダーが28ゴールドもらい、その他の9人で8ゴールドずつ分けました。 青

        • 【怖い話】再会(ショートショート)

           山田美咲は仕事の忙しさに追われ、毎日終電で帰宅する生活が続いていた。午後11時過ぎ、疲れた体を引きずりながら駅に向かい、終電に乗り込んだ。 車内がさほど混んでいないのが、せめてもの救いだ。美咲はさっそく座席に座り、スマートフォンでニュースを見はじめた。人気記事のランキングが政治家の不祥事で埋め尽くされているのを見て、まじめに働いているのが馬鹿らしく思え、疲れが増した気がした。 ふと視線を上げると、向かいの座席に座る若い女性が目に入った。自分と同じ年頃だろうか。彼女もまた

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        【怖い話】手毬唄 (ショートショート)

          【怖い話】扉(ショートショート)

           夏の夕暮れ、蒸し暑さが一段と増し、西日がうっとおしいぐらいに頬に当たる。頼子はお盆休みを利用して祖父母の家を久しぶりに訪れた。 「お腹が空いてるでしょ?晩ご飯を作りましょうね」 祖母は優しく微笑んだ。頼子は頷き、祖母の後を追って家に入った。 この家には子供の頃の楽しい思い出が詰まっている。見渡すと懐かしい家具や置物が目に入る。祖母が手入れしている庭も、少し荒れてはいるが、昔のままだった。 家屋は古い木造で、広い縁側があり風が心地よく吹き抜ける。祖父はその縁側に腰掛け

          【怖い話】扉(ショートショート)

          【怖い話】エレベータ(ショートショート)

          ホラー映画の上映が終わり、劇場の出口に向かうため、ひと組の男女がエレベータに乗り込んだ。 エレベータが下降し始め、程なくして彼らはある異常に気が付いた。1F階のボタンを押したはずだが、数分経過してもエレベータは止まる気配がない。男は焦った表情で、でたらめにボタンを押すが、まったく反応しない。今度は女が、非常用ボタンを何度も押したが、カチカチと手応えの無い音が鳴った。 女がスマホを取り出してどこかへ電話をかけようとしたとき。 ――カゴンという音とともに、エレベータは急停止

          【怖い話】エレベータ(ショートショート)

          【怖い話】アンケート(ショートショート)

           レストランの隅にある作業机の周りでは、従業員たちが『レストランのサービス向上』のアンケート用紙を開封していた。  おのおのが手にした用紙を広げ、真剣な表情で文字を追いながら驚いたり、微笑んだりしている。  「これ、ちょっと変だよ」と従業員の一人が言った。  「『料理はとても美味しかったですが、店内はとても不気味でした』って書いてある……」  他の従業員たちも用紙を取り囲み、その不思議なコメントを読んだ。彼らは顔を見合わせたが、誰もその意味は理解できなかった。  「

          【怖い話】アンケート(ショートショート)

          【怖い話】キネマ館の夜(ショートショート)

           拓哉は今日の段取りを頭の中で反芻しながら、待ち合わせ場所に着いた。  真理子との初デートに選んだのは、町にたった一つの古びた映画館だった。  この町は、都市と農村の間にある住宅地で、老朽化した団地がそこら中にある。  昔は大きな食品メーカの工場もあり、町も潤っていたが、今は高齢化率が高い限界集落と言われているらしい。  娯楽施設といえば駅前ボーリング場と、この映画館しかないが、元々映画にはあまり興味が無かったため、ここに入るのも初めてだった。  映画館は木造の建物で、外壁は

          【怖い話】キネマ館の夜(ショートショート)

          【怖い話】黒いコートの女(ショートショート)

           澤田は仕事で疲れた身体を引きずりながら、一人で暗い路地を歩いていた。吹き抜けた寒風が肌を刺す。路地の両側には古びた建物が並び、自分の足音が跳ね返る。  そのとき、すぅーと人影が現れ、澤田の視界を横切った。  黒いコートに身を包み、耳元で切り揃えられたショートヘアの女性が月明かりに浮かび上がる。  滑るように通り過ぎるその女性の姿に目を奪われた。どういうわけか、昔からショートヘアーの女性に魅力を感じるタイプだった。  街灯の明かりを浴びて、端正な顔の輪郭が浮かび上がり、都

          【怖い話】黒いコートの女(ショートショート)

          【怖い話】音楽堂の怪人(ショートショート)

          彼女は、夜毎にイェニチェリ音楽堂の幽暗な舞台に姿を現す。美しくも不気味な存在だった。 彼女はかつて、エレーナと呼ばれた音楽堂のスターの一人であり、その美声と圧倒的な舞台上の存在感で観客を魅了していた。しかし、彼女の栄光は短命であった。ある日、彼女は舞台上で不慮の事故に遭い、その美しい顔に深い傷を負った。その後、彼女は音楽堂の地下深くに姿を消した。 しかし、夜になると、エレーナの歌声が再び音楽堂を満たすと噂されるようになった。その声は美しくも哀しげであり、それを聴いた者たち

          【怖い話】音楽堂の怪人(ショートショート)

          【不思議な話】宝物(ショートショート)

           山間部の村に住むある老人が、毎晩村の外れの森に行き、何かしているという噂が広まった。村人たちはその老人を不気味だと感じ、交流を避けていた。  ある日、好奇心旺盛な村の若者たち3人が、その老人の家を訪ね、森に行く目的を尋ねた。老人は、昔失われた財宝を探していると静かに告げた。彼は冒険家であり、その財宝の秘密を知っている数少ない人物だった。 壁の写真には、沈没船から金貨を引き上げた若かりし日の老人が、笑顔で写っていた。 若者たちは老人の話に興味を持ち、彼と共に財宝を探す冒

          【不思議な話】宝物(ショートショート)

          【怖い話】境界線(ショートショート)

           ある小さな町に、古い墓地があった。その墓地は昔から町の住民たちの最後の安息の場であり、多くの人々がここに眠っていた。 ある夜、町は異様な現象に見舞われた。墓地の周りに不気味な霧が立ち込めた。今度は地中から奇妙な音が聞こえ始めました。最初はかすかな声だったが、次第に合唱のように墓地を包み込んだ。 何人かの住民は恐ろしいことに気付いた。墓地から死者の群れが押し寄せているのだ。死者の群れは、既に墓地を出て、町の中心部に向かって歩き始めていた。住民たちは、その現象に対処しようと

          【怖い話】境界線(ショートショート)

          【もやっとする話】カレーの秘密(ショートショート)

          ある小さな村に、村の守護神として語り継がれる伝説のヒーローがいました。彼の名は、カレンジャーと呼ばれていました。 カレンジャーは、村のカレー屋で働いていましたが、本当の役目は村の秘密を守ることでした。その秘密とは、村が代々守り続けてきた特別なカレーのレシピでした。このレシピで作ったカレーは、食べた人を長生きにする力を持っていると言われていました。 ある日、敵対的なカレー商人団が村を襲撃し、その秘密を手に入れようとしました。スパイスの交易ルートを断つと、村人たちを脅迫し、カ

          【もやっとする話】カレーの秘密(ショートショート)

          【怖い話】昆虫の森(ショートショート)

           夜になると南の森から不気味な羽音が聞こえ、畑や家の周りにたくさんの昆虫が集まるようになった。村人たちは、7年周期でやってくるこの現象は、不吉の予兆だと信じており、夜の外出すら避けるようになっていた。 村の若者マルコは、昆虫の群れが出現する時間帯に、森に入ることを決意した。原因を調査し、村人の不安を解消したかったからだ。  ある夜、彼が森に入っていくと、暗闇の中に何かが蠢いていているような感覚がした。突然、彼の周りに黒い昆虫の大群が姿を現した。蛾、甲虫、蝶……さまざまな種

          【怖い話】昆虫の森(ショートショート)

          【不思議な話】人形職人(ショートショート)

           小さな村の職人、エドワード・クレイトンは、美しい人形を作ることで有名だった。彼の手仕事は完璧で、人形たちの目は輝きを帯び、動きは柔らかく、まるで生命が宿っているようだった。 エドワードは森の中にある古い屋敷に移り住み、人形を作り続けた。しかし、村人たちの中には、エドワードの人形を不気味だと感じ、その屋敷を避ける者も少なくない。 ――ある夜、村の少女ローラが、エドワードの屋敷の庭に迷い込んだ。彼女は、偶然窓の隙間から見えた人形たちに魅了され、エドワードに会いに行くことを決

          【不思議な話】人形職人(ショートショート)

          【もやっとする話】さかさま(ショートショート)

           ある日、小さな町のレストランで驚くべきことが起こりました。そのレストランのシェフ、ジョーは、新しいレシピを試すことに決めました。彼は普通のハンバーガーを作る代わりに、逆さまのハンバーガーを考案しました。 逆さまのハンバーガーは、バンズの上に野菜、その上にチーズ、そして最後に肉が乗っている独特のスタイルです。 レストランが開店すると、注文が殺到しました。人々はこの新しいアイデアに興奮し、そのハンバーガーを試してみたいと考えました。最初は不安そうな顔をしながらも、ハンバーガ

          【もやっとする話】さかさま(ショートショート)