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【不思議な話】宝物(ショートショート)

 山間部の村に住むある老人が、毎晩村の外れの森に行き、何かしているという噂が広まった。村人たちはその老人を不気味だと感じ、交流を避けていた。

 ある日、好奇心旺盛な村の若者たち3人が、その老人の家を訪ね、森に行く目的を尋ねた。老人は、昔失われた財宝を探していると静かに告げた。彼は冒険家であり、その財宝の秘密を知っている数少ない人物だった。

壁の写真には、沈没船から金貨を引き上げた若かりし日の老人が、笑顔で写っていた。

若者たちは老人の話に興味を持ち、彼と共に財宝を探す冒険に出ることを願い出た。彼らは森の奥深くに向かい、古い地図に示された目印と記号を頼りに進んでいった。

 ついに目的地に到着すると
――そこには古代の廃墟があり、財宝の隠された場所が示されていた。彼らは知恵を集結し助け合いながら探したが、結局、財宝は見つからなかった。

失望した若者たちは老人に謝罪しようとすると、老人は彼らに言った。

「財宝は失われてしまったかもしれない。しかし、この冒険を通じて、
私たちは新しい友情を見つけることができたじゃないか。それだけでも十分に貴重な宝物だと思わないか?」

老人の部屋に飾られた写真の笑顔よりも、満ち満ちた表情を見て、若者たちは、この冒険が彼らにもたらした価値を理解した。

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