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【もやっとする話】赤い村(ショートショート)

むかしむかし、ある国に赤村と青村がありました。
赤村と青村にはそれぞれ10人の村人が住んでいました。村人たちはいつも仲良くしていましたが、ある日、どちらが幸福になれるかで競争することになりました。

赤村では赤いバラを栽培して販売しました。100ゴールド儲かったので、10人の村人で平等に10ゴールドずつ分けました。
青村では青いバラを栽培して販売しました。同じく100ゴールド儲かったので、一番頑張ったリーダーが28ゴールドもらい、その他の9人で8ゴールドずつ分けました。

青村では頑張ると、たくさんのゴールドがもらえるので村人は競って青いバラの品質を良くしようと努力しました。反対に赤村では頑張っても頑張らなくても全員平等に10ゴールドと決まっているので赤いバラの品質はいつまでたっても良くなりませんでした。

ついに青いバラは1.5倍の価値になり、150ゴールド儲かるようになりました。青村の一番頑張ったリーダーが42ゴールドもらい、その他の9人で12ゴールドずつ分けました。

それを知った赤村の村長は面白くありません。そこで赤村の村長は赤いバラの利益の50%を自分がもらい、残りを平等に分配するルールを勝手に決めてしまいました。赤村の村長は国で一番多くの50ゴールドをもらえるようになりましたが、他の村人9人には5ゴールドずつしか配られませんでした。

赤村の村人9人は自分勝手なルールを決めた村長を許せませんでした。ある晩、村人たちは村長に赤いバラのエキスを入れた紅茶をふるまいました。赤いバラのエキスには人間を消してしまう魔法の効果があったのです。そして村長がいなくなって赤村は9人になりました。

しかし、これでは村人9人に対して一人11ゴールドずつしか配られません。青村の村人は最低でも12ゴールをもらえるのに……。

次の日、赤村で不思議なことが起こりました。村人が一人消え8人になっていたのです。その次の日には、また村人が消え7人になっていました。これで赤村の村人は一人14ゴールドもらえるようになりました。

一部始終を監視していた国王が赤村と青村に問いかけました。

「結局、赤村と青村どっちが幸福なのか?」

どちらも自分の村の方が幸福だと答えました。

――100年経って、赤村の人口は10億人になりましたが、赤いバラの品質は100年前と変わっていませんし、たまに村人が消えていなくなることがあるそうです。

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