【怖い話】アンケート(ショートショート)
レストランの隅にある作業机の周りでは、従業員たちが『レストランのサービス向上』のアンケート用紙を開封していた。
おのおのが手にした用紙を広げ、真剣な表情で文字を追いながら驚いたり、微笑んだりしている。
「これ、ちょっと変だよ」と従業員の一人が言った。
「『料理はとても美味しかったですが、店内はとても不気味でした』って書いてある……」
他の従業員たちも用紙を取り囲み、その不思議なコメントを読んだ。彼らは顔を見合わせたが、誰もその意味は理解できなかった。
「勘弁してくれよ。こんなのもあるぞ」
店長は眉をひそめながら、後ろに座っている従業員に開封したばかりの用紙を渡した。
『食事をしている最中、壁に黒い影が現れました。その影は私をじっと見つめて笑っていました。あなた方のサービスは素晴らしかったですが、私はもう二度とこのレストランに来ることはありません』
「何だこれ……気持ち悪い」
別の従業員がテーブルの上に二枚のアンケート用紙を広げた。
『食事を終え店を出るとき、首筋から誰かの手が伸びてきたような感覚を覚えました。振り返ると、誰もいませんでした。私は何かに憑りつかれてしまったのでしょうか?』
『いつでもここにいる。怖がらなくていい。ただ、気をつけて』
楽しい雰囲気から一変し、静寂が部屋を包み込んだ。
――誰かが小さな悲鳴を上げ、アンケート用紙を床に落とした。
その場にいた全員が不安そうな表情で、床に落ちた用紙を見つめる。
そこにはこう書かれてあった。
『ふりかえっちゃだめ』
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