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灰汁詰めのナヴォー

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小説っぽいなにかがあります
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2019年1月の記事一覧

A mochi , a world

A mochi , a world

 原初の時、宇宙には星々存在せず、白砂のような≪ケイオス≫と、光り輝く二人の巨人しか居なかった。

 一人の巨人は肩幅が広く、男性の特徴を持っている。その手には長い柄の先に円錐状の頭が付けた、杵みたいな工具があった。

 もう一人は腰の部分がやや窪んでおり、女性の特徴を持っっている。その手には一面が窪んだ穴が開いた、臼めいた円柱体があった。

 二人は互いを見、瞬時に状況を理解し、自分の使命を悟っ

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ライムのゆくえ:4

ライムのゆくえ:4

 午後四時、そろそろ閉店の時間だ。今日の最後の客は男女二人、着崩れた制服姿の高校生。二時ぐらい入店してから、ナチョスとドリンクを注文してずっと隅の席でいちゃついてる。ほら、今にもキスしちゃうぐらい顔の距離が近い……あっ、キスした。

 学校をサボってここに来た事実は明白だが、私は年長者面して二人を注意するつもりはない。子供の教育は両親と教師の仕事だ。それに二人に説教をたれるほど良い子してなかったし

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ようこそ、ユーシャルホテルへ!③

ようこそ、ユーシャルホテルへ!③

「おはようございます、イルジ様。杖はこちらにお預かりください」

 声が若い女給仕が出迎えてくれた。

「どうも」

 声がする方向に杖を差し出し、目を覆う布を取った。やはり距離感がおかしい。結局私は初心に戻り、鍛えた聴覚と嗅覚、そして杖を頼りに、食堂に辿り着けた。取り戻したばかりの視力は暴れ馬のようで、私の体力を奪て行く。私は心を強くし目眩に耐えた。これ以上に無様を晒すと、東部を轟かす恐るべき魔

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ふたりはPre-cure【エピローグ】

ふたりはPre-cure【エピローグ】

 帰りの電車で、深友はスマホをいじる気力すらなく、ただ席にもたれ込み、Pre-cureの二人からもらった名刺を眺めて、今日起きたことを反芻していた。

『これでおれたちの任務は終了だ。お大事にな』

『ま、待ってください!鈴さ……あの女がまた来るって言ったよね?俺はこれからどうすればいいの?』

『現実的に言うなら、引っ越して、携帯番号もSNSアカウントも全部新しく作った方が良いだろう』

『そん

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