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A mochi , a world

 原初の時、宇宙には星々存在せず、白砂のような≪ケイオス≫と、光り輝く二人の巨人しか居なかった。

 一人の巨人は肩幅が広く、男性の特徴を持っている。その手には長い柄の先に円錐状の頭が付けた、杵みたいな工具があった。

 もう一人は腰の部分がやや窪んでおり、女性の特徴を持っっている。その手には一面が窪んだ穴が開いた、臼めいた円柱体があった。

 二人は互いを見、瞬時に状況を理解し、自分の使命を悟った。

「初めまして、≪叩く者≫(スマッシャー)です」「≪混ぜる者≫です(ホルダー)です」「それでは、始めようか」「はい」

 二人はがその辺に広がるケイオスを掬い上げ、円柱体の穴に放り込む、量が十分になると、叩く者はまず工具でケイオスの粒をこねて、粘着させた。ケイオスみるみるうちに一個の塊に形になり、混ぜる者が円柱体の側に片膝ついた。

 「スゥー……」叩く者はエーテルを体内に吸い込み、力を全身に巡らせた、そして。「ヨイッショ!」バッシュ!杵が弧線を描き、勢いよく粘質のケイオスに叩きつけた。「ヨイッショ!」バッシュ!エネルギーが叩く者のコアマッスルから肩に伝い、腕に伝い、指に伝い、そして柄を通して杵の先端に集まる!「ヨイッショ!」バッシュ!叩きつける!衝撃エネルギーでケイオスが跳ねあがり、その破片が微粒子になりエーテルの波を乗り四方に散っていく。「ヨイッショー!」叩く者はケイオスの様子から何らかの兆候を読み取り、混ぜる者に云った。「次は頼む」

「任せろ。スゥー……」混ぜる者も同様にエーテルを吸い込みと、その両掌にエネルギーが集まり、七色のオーラに覆われた。目で叩く者に合図を送り、叩く者が頷き、再び杵を高く掲げた。

「ヨイッショ!」バッシュ!そして杵が粘質のケイオスから離れた途端、「ハイ!」混ぜる者はつかさず手を臼に伸ばし、ケイオスを翻し、杵が落ちてくる前に手を引っ込む。「ヨイッショ!」「ハイ!」今度はケイオスを掬い上げるように折り畳む。

「ヨイッショ!」「ハイ!」「ヨイッショ!」「ハイ!」「ヨイッショ!」「ハイ!」「ヨイッショ!」「ハイ!」「ヨイッショ!」「ハイ!」「ヨイッショ!」「ハイ!」「ヨイッショ!」「ハイ!」「ヨイッショ!」「ハイ!」

 二人の息が合った動きから凄まじい運動エネルギーを生じ、熱と光を発生させた。二人の額から汗が浮かび、空間に蒸発していった。そして臼の中にあるケイオスの表面がだんだん滑らかになり、もちもちとした半固体になって行く。

「ふむ、そろそろか」混ぜる者は手で触感を確認、ケイオス塊が十分に仕上げたと判断し、臼から持ち上げて、次の段階に移した。

 虚無で構成されたテーブルにケイオス塊の乗せ、自分も虚無の手袋を嵌め込むと、二人はテーブルに囲んでケイオス塊に手で摘み、適切な大きさに引きちぎった。

 小さなケイオス塊を掌でねり、円形にするとテーブルに置き、また次のケイオスをねる。虚無の斥力のため、ケイオスに粘りつくことがない。二人は一心に作業を進め、すぐに百個ぐらいの小ケイオスがテーブルに並んだ。

 そして二人はまは臼にケイオス粒を臼に入れ、潰し、翻し、ちぎって練る……その循環が7回になった時、叩く者はケイオスを練っている手を止めた。

「疲れた」「……正直、私も」

 二人の巨人が発する光がわずかに弱っている、疲労がたまった証拠だ。

「ちょっと休憩しよう」「そうだね、もう……92億年も働いたもの」

 手袋を脱ぎ捨て、小ケイオスにラップをかけた。

「少し仮眠をとる。先に起きた方が相手を起こしていい?」「わかった」

 二人はその場で寝そべた。あまり時間がかからず、眠りについた。

 彼らは知っていなかった。ケイオスをつく際に生じたエネルギー、自分の汗、そして、宇宙に漂うケイオスの粒子、それらが不純物は命を構成する源であること。たまにケイオス塊の表面に付着した不純物がすぐさま自己複製をはじめ、最初の生命が誕生し、そして時間が過ぎ、知性を持つ生物が現れた。

 ある者が瞑想トレーニングの末に、あるいは薬物を頼って意識を遥かかなたへ飛ばした際に、この真実を垣間見た。暗黒だけが広がる宇宙に、二人の巨人がケイオスに杵を叩きつけ、翻し、銀河を、あるいは今の宇宙を作った。それ動きはなんと、アジア各地で見られる「餅つき」という行為に酷似している。

「我々の知る世界は、餅つきの副産物に過ぎん。巨人はいつか目が覚めて、お餅に生えたばい菌である我々を滅ぼしてくるだろう」という宇宙お餅論を唱えたアーキュ・ズム・メイン教授だが、学会が彼の説を一蹴し、会員証を奪い追放した。彼は老年になって実家のブルーアガベ畑にもどり、「オモチ時計」なるものを造った。

「この時計の針が12時0分になると、巨人が蘇えり、餅作りの作業に戻る。その時何が起きるか、彼らはなぜ餅を作るか我々知るすべがない」アーキュは密造テキーラを呷った。「だが宇宙に浮かぶ惑星、あるいは銀河そのものがお餅だとしたら、いずれは出荷され、食べられるか、あるいはカビが生えたと思われている捨てられる運命に辿るでしょう。私はその日のをオモチカリプスと呼んでいる」

 オモチ時計に見やる。その針は11時40分に止まっている。

「そして今、ただ一人の働きによって、オモチ時計の針が進んだり、戻ったりする。私はこうして針がいつか十二を超え、巨人の手が地上のすべてを薙ぎ払う恐怖を和らげるため、アルコールで感情を麻痺させながら、noteアプリを通して彼のことを見守り、時にコメントや引用RTで少しでも針の進行を一秒でも遅らせようとしている、お01101001望10月0101さ10…

 オモチ時計の針は一気に35分も進んだ。

◆ 餅 ◆

「ふわ〜ん。よく寝た。あなた、起きなさい」

「うーん……なに?もう46年も過ぎたか。ちょっと寝すぎたかも」

「寝ている間のタイムロスを取り戻さないと……あっ」

 テーブルを眺める叩く者はすぐに何らかの異常に気づき、一つの小ケイオスを摘み上げた。

「このケイオス、なんか腐ってない?」

「あ、本当だ。捨てよ」「うん」

 叩く者は手を大きく振り上げ、腐ったケイオス塊を宇宙の彼方へ投げた。

「ラップ掛けたから大丈夫だと思ったけど、過信は禁物ね」

「他にも腐ったやつがあるかもしれないからチェックしておこう」「うん」

 二人は小ケイオスの検点を始め、腐った物や異物が混じったやつを見つかり次第投げ捨てた。オモチカリプスが始まった。

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