むとうゆか

むとうです。つのうさぎ。ことば。

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男性ブランコと私記

 2021年10月2日(土)、何となくネット上での周りの話題についていくためにTBS系列が映らない辺境の地・秋田で、キングオブコントの放送終了後すぐ、TVerで見逃し配信を観ていたときのこと。  画面にはメガネをかけた「ふつう」っぽい男性と、インパクトの強い女装をした男性の姿。  「雷に打たれたような衝撃」とはこのことか、と思った。  一目惚れ、一見惚れ、一ネタ惚れ、どの言葉を使って表現するのが適切なのか、未だに答えは出ていないけれど、とにかく、全てが「ドストライク」だ

    • ひかり

      「おまえは本当に綺麗事しか言わないね」と言われたことがある。もう5年も前の話。 そんなに前の話なのに、今でも一瞬であの場所に引き返される。冬の手前みたいな冷たい匂いも、秋の終わりの中途半端な温度も、日が暮れて暗くなりかけた色も、全て簡単に蘇ってしまう。 と同時に、それを生徒昇降口にあった自販機の前でひとに話したときのことも思い出す。 当時の私には「あいつに『綺麗事しか言わない』って言われたんだけど! 」と、大声で怒りを露わにしたり、愚痴を言ったりするような元気はなか

      • 20xx

        何年が経ったのだろうてっぺんを越すわくわくを忘れた日から 2分だけわざとずらして予約するメールの語尾に星をまぶして あけましておめでとう(顔)これからもよろしく(ハート)生きていようね ぴったりの時間に動くキラキラのデコメが届くことはもうない デコメ代わりにスタンプを送るのもめんどくさくてなんかごめんね マルキューに並ぶ行列、8割は仮装と同じ人だよ(たぶん) 人混みにまぎれる君を見つけ出す自信がなくて一人がこわい あけましておめでたくなくたってこの僕らの日々は続

        • 4畳8間

          「一人暮らし」というものをしたことがない。 高校を卒業して2ヶ月間は実家に居座りながら近所のコンビニでバイトをし、その後は何のご縁があってか2ヶ月ほど高知県で農業じみたことをしながら6人ほどで下宿のような生活を送り、秋田に帰って大学に入学してからはほぼ寮生活のような暮らしである。 部屋を「借りる」というよりは、行く場所行く場所で用意された住居にお金を払いそこに住んでいるという感覚。 しかし、一度だけ、「部屋を借りた」ことがある。ちょうど1年ほど前のことだ。 秋田で大学生を

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        • 定型
          5本

        記事

          Evidence.

          時給1100円でイケメン気取り上司の機嫌取りをする昼 疑いを知らない顔で頷いている人々の真似をしてみた エビデンス、それは強みと教わってから飲み込めずにいる違和感 納得のできない答えだけ押し付けられる社会にそっと中指 いま僕が知りたいことは答えではなく省略された途中式 途中式とばして答えだけを書くことが愚かと今なら分かる この街を歩くトイプードルの生活水準を考えて泣く 制服と一緒に送り返すはずだった診断書を破る夜

          並行世界

          何かを得るためには何かを失わなくてはならない 私がかつて愛読していた『世界から猫が消えたなら』という小説に幾度となく出てくる言葉である。 「何かを得るためには何かを失わなくてはならない」というのは果たして本当なのだろうか。その本を初めて読んだ当時、つまり6年ほど前からそんなことずっと疑問に思っていた。 そして最近、なんとなく、その問いの答えに近づけたような気がする。 かつての私は「何かを得るためには何かを失わなくてはならない」という言葉が意味するのは、例えば普段の消費

          白昼夢のなかの葬列

          レミちゃんが死んだ。 レミちゃんは明るくハキハキしていて人見知りもしない子で、いつも影でゆらゆらしている私とは正反対であるようにも見える子だった。 レミちゃんと友だちだったのか、と訊かれると、私たちは友だちだったような気もするし、そうではなかったような気もする。友だちとか友だちではないとか、そういう次元ではなく、レミちゃんと私は「レミちゃんと私」以外の何物でもなかった。 いつ頃、何をきっかけに知り合ったのかももう思い出せないけれど、そんなことは私たちにとってどうでもいい

          白昼夢のなかの葬列

          つぎはぎだらけのぬいぐるみ

          どん底だった。 学校に行けなくなった(気がするだけで本当は1日くらいしか休んでいなかったかもしれない)。 およそ4年半前、高校1年生の冬のこと。 勉強が嫌いだった。部活が嫌いだった。 もう鮮明には思い出せない日々。 ちょうどその頃、「君に会えたらもう死にたいな」と歌うバンドに出逢い、「どん底」で、ずっとその人たちの音楽ばかりを聴いていた。 「君に会えたらもう死にたいな」の後ろに続くのは「でもまだ僕は君に会えない」というフレーズである。 鬱々とした曲をつくるそのバンドが。当

          つぎはぎだらけのぬいぐるみ

          明朝体

          明朝体ポエム。 今から10年ほど前、私がちょうど小学校高学年から中学生だった頃に流行った画像である。 ちょうどこんな感じの。これは自分の過去作で「それっぽい」ものを明朝体加工したものだけど、本当は(というよりは「当時流行っていたものは」という言い方のほうが適切かもしれないが)もっと、空がどうの、君からのメールがどうのみたいなので、それはもう、私が生息していたインターネットのあちらこちらにこんな画像があった。 そしてそれを家でいい感じの大きさにプリントアウトして、100円シ

          400g298円

          モツを煮ている。 今日はライブハウスに行く予定だったはずなのに。 ライブハウスに行けなくなった。 というか、動けなくなった。 部屋を片付けることも、家事をすることもままならず、ベッドの上でただひたすらにラーメンズのコントを見ている。 たまに「ねえ、アレクサ、かなしい曲を流して」なんて言いながら。 そんな日々が1週間くらい続いた。 動けなくてもお腹は空く。 部屋にあったパスタを茹でる。麺つゆと食べるラー油をかける。食べる。 洗わなければいけない食器はたまる。食べても気持ちは

          a/symmetry

          例えばの話、わたしの人生の主役があなたでも構わない 内緒だよ 誰かの夢を抜け出してこっそりここに会いに来たこと 貸したきり返ってこないセーターを忘れられずにまた春が来る ケサランパサランに夢を運ばせるあなたはどうかしあわせでいて いつの日か夢に出てきた十字架の交点にいる。今日も会えない。

          2018.10-2019.02

          こんばんは。むとうです。最近あまりにも何もしていなかったので、そろそろ何かせねばなあ、と思い、とりあえずタイトルの期間に発表したりしなかったりした短歌やそれっぽいものなどを、一部修正しつつまとめます。 並んでも同じ景色は見れなくてあなたは誰を愛していたの (2018.11.29 うたの日『並』) 疑いを知らないままのあの頃の気持ちで君を愛したかった (2018.11.30 うたの日『疑』) 君に差す光に僕はなれなくて悲しい夢の続きだけ見る (2018.12.01 うたの

          2018.10-2019.02

          とうきょう。

          中高の友だちにここを見つけてもらって、私も最近のことを少しだけ書いてみようと思った。短歌はまだできません。ごめんなさい(何に対する謝罪なのかは分からないけれど)。 2019年1月15日から東京にいます。たぶん3月24日くらいまで。去年の8月から、なぜか1ヶ月に1回のペースで東京に来ていて、秋田に帰るたびに気分が沈んでしばらく何もできなくなる私を見かねた友だち数人が「冬セメ*取らないで東京にでも行ってくれば?」と声をかけてくれたのがきっかけです。 (*私が通う大学は4-7月が

          とうきょう。

          久々に短歌をこねこねしました。このなかに1首だけ、高校生のときに作った歌があります。分かったらこっそり教えてください。正解された方には何かしらの何かを用意しておきます。 = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = 真夜中に光って流れ落ちること、今まで怖かったよね、ごめんね 光からあなたを守るため僕は雨雲として来世を生きる 君に降る僕の知らない街の雨、やっぱり僕じゃだめだったんだね 泣いている君の涙を隠すため雨に生まれ

          定型

          「ユーザー名を統一するため」という名目のお引越しです。とりあえず初めに、ずっと公開しつづけている短歌をば。 引越しを重ねてぼくはどこに行きこれから何を失うのだろう 会いたいと思わなければ会わなくて済むこの距離に救われている あの冬の匂いを忘れたくなくて一滴残してる柔軟剤 捨てられぬ柔軟剤の空ボトル墓石に見立てて冬を弔う △ABCの上でただBC間を行ったり来たり 晴れの日が嫌というのは飛び降りる理由になりませんか、先生 明日は晴れ、何をするにもいい天気(身を投げた