400g298円
モツを煮ている。
今日はライブハウスに行く予定だったはずなのに。
ライブハウスに行けなくなった。
というか、動けなくなった。
部屋を片付けることも、家事をすることもままならず、ベッドの上でただひたすらにラーメンズのコントを見ている。
たまに「ねえ、アレクサ、かなしい曲を流して」なんて言いながら。
そんな日々が1週間くらい続いた。
動けなくてもお腹は空く。
部屋にあったパスタを茹でる。麺つゆと食べるラー油をかける。食べる。
洗わなければいけない食器はたまる。食べても気持ちは満たされない。
昨日、斜め前あたりの部屋に住む友だちが砂肝を持って部屋に来てくれることになったので部屋を片付けた。意外と動けた。食器も洗った。えらいぞ、自分。
砂肝を食べたらいくらか元気になって、こんな日々でもいいかな、なんて思えた。
モツを煮ている。
先だって、友だちと「ビールを飲みながら焼き鳥を食べる会をしたい」という話をしていた延長線で、モツも煮ることにした。よりによって昨日の今日。善は急げ。焼き鳥もある。ビールも買ってきた。もう怖いものなしだ。
モツを煮ている。
手に入らないものばかり欲しくなる。
手の中にある幸せには気づかずに、手に入らないものばかり追いかけてしまう。
欲しかったもの、もういくらかは手に入らないね、かなしいね。
わたしがいなくてもまわる世界に必死にしがみついていた。
わたしが願わなくても叶うようなことをずっと願い続けていた。
きっと、わたしの「身の丈にあった幸せ」は、今、目の前にあるモツ煮が全てなんだと思う。
モツを、煮ている。
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