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「『いちご白書』をもう一度」にみる学生運動の名残

松任谷由実(荒井由実)さんは、ご自身でも大ヒット曲多数の偉大なアーティストですが、楽曲提供者としても素晴らしく。一番の成功例は、呉田軽穂名義で提供した松田聖子さんの名曲の数々。「赤いスイトピー」「制服」「瞳はダイアモンド」「蒼いフォトグラフ」などなど。

他の歌手の例でいえば、岡崎友紀さんに提供され、アン・ルイスさんがカバーしてヒットした「グッドラック・アンド・グッドバイ」とか、三木聖子さんに提供され、石川ひとみさんがカバーしてヒットした「まちぶせ」とか。

そんな一曲がバンバンの「『いちご白書』をもう一度」。バンバンとは、ばんばひろふみさんを中心としたフォークグループ(デュオ)で、ばんばさん自身はソロとしてヒット曲「SACHIKO」がありますし、アリスの谷村新司さんともラジオ番組をやっていました。

「『いちご白書』をもう一度」は1975年にリリース。Wikipediaによれば「過ぎ去った学生時代を思い出すという内容の曲で、タイトルにある『いちご白書』は、1970年に公開されたアメリカ映画で、1968年にコロンビア大学で実際に起こった学園紛争の手記をもとに制作された」というもの。

詳しくは歌詞検索していただくとして、学生運動を感じさせるキーワードとして「学生集会」という言葉が出てきますし、登場人物の男性の風貌に関する歌詞も、いかにも当時の学生といったものになっています。

自分も『いちご白書』という映画はレンタルビデオで見たことがありますが、1960年後半は「スチューデント・パワー」と呼ばれる学生運動が、世界中で起こっていた時期で、日本も例外ではなく。

1967年の羽田事件(闘争)、1968年の佐世保エンタープライズ寄港阻止闘争や新宿騒乱、そして有名な1969年の東大安田講堂事件。三島由紀夫さんが東大全共闘1000人と伝説の討論をしたのもこの年。

「私は諸君の熱情は信じます。これだけは信じます。ほかのものは一切信じないとしても、これだけは信じるということはわかっていただきたい」

ユーミンと学生運動というと意外な気がしますが、1970年代にはまだその名残があったのでしょう。そんな時代背景を頭に入れつつ、この名曲を聴いてみるのも一興です。

余談: 満島ひかりさんと佐藤健さん共演のNetflix『First Love 初恋』予告編を見ていて、かつて「あなたは私の初恋でした」という手紙をもらったことを思い出す雨の火曜日。そうか、かつて自分は誰かに愛されていたのだと。その想い出だけでも人は生きていける。


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