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大きくなったらなりたいもの

「おかあさんは、大きくなったら何になりたいの?」
湯船に一緒につかりながら、5歳になる次女が目をキラキラさせて私に聞いてきた。
大きくなったら?もう充分大きいと思っていたので、答えにつまった。私は大きくなったら何になりたかったのだろうか。

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私は小さい頃から本が好きだった。書くことも好きで、小学生の時所属していた読書クラブでは私が書いた脚本で、朗読劇をすることになり、録音した記憶がある。

本は私にとって、楽しみであると同時に、逃げ場でもあった。教育熱心な母と家庭に関心のない父の元に育ったため、勉強の出来不出来で家の居心地が変わり、心からくつろげる場所ではなかったからだ。本は、自分の知らない世界を知ることができる上に、読んでいる時間だけは現実を忘れて空想の世界に浸ることができる至福の時間だった。

社会人になってからも、本は引き続き楽しみであると同時に現実逃避的な向き合い方だったように思う。家族との問題に加えて、仕事に関する悩みが増えたためである。
どちらかというと感覚的に生きてきたのに、就職先は、まさかの数字や論理的思考をベースにした仕事。自ら荊の道を選んでしまう性のようだ。ただ当初苦手、恐怖でしかなかった数字であったが、お付き合いが長くもなると、現時点では戦友のようにすら感じている。

結婚後、特に子どもが生まれてからは、読書は逃げ場というより必要な情報収集に変容した。本だけでなく、スマホでの検索も増えた。
とはいえ、長女出産後、母との関係の危機があり、カウンセラーの先生に救われた。その経験から自分もカウンセリングの技術を身につけたいと思い、2021年に産業カウンセラーの資格を取得。キャリアにくすぶり続ける自分を見つめなおすと同時に、キャリア支援もできるカウンセラーになりたいと思って、2022年にキャリアコンサルタントの資格を取得した。本業とは別に、友人の仕事の手伝いもスタートした。

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「おかあさんは、大きくなったら何になりたいの?」娘からの質問に、一瞬狼狽した私。
日頃は本業の業務に在宅勤務ながらも深夜まで追われ、最低限の家事で何とか回している状況。かといって、この仕事が天職として心からやりたいと思ってやっているかと言ったら、YESと即答はできない。

私は少し考えた後、「おかあさんは、、大きくなったら本を書く人になりたいな」と意を決して打ち明けたところ、
「そうなんだ!」と目をまんまるに見開き、「じゃあ、ほんやにおかあさんの本買いにいくよ」とニッコリな娘。私の夢を肯定してくれただけでなく、私の本が書店に並んでいる図まで具体的なイメージをくれた。強烈なインパクトで一気に波動が上がった。とてもうれしかった。

笑顔で肯定してもらうことが、こんなにも明るく、はつらつとした気持ちになるとは。まるで娘がカウンセラーのようだ。

お風呂から上がった後、しばらくして娘が「大きくなったら看護士さんになりたい」と伝えてくれた。これからいろんなものを見聞きして、なりたいものはこのままかもしれないし、変わるかもしれない。どんな時でも母は娘の決断を肯定し、満面の笑顔でそっと支援したい。

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