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何だか最近眠れない夜が多くなった気がする。

今日もちゃんと友人と楽しい休日を過ごしたし、たくさん話をして一緒に美味しいご飯も食べた。
楽しかった。ちゃんと楽しかったはずなのに何でこんなにも満足できないのか。
誰だったか思い出せないが、何年も前に「お前の心は底に穴が空いたバケツなんだよ。いっぱい幸せを欲しがってしまうから周りの人間がどれだけ頑張って注いでも底に穴が空いているから満足どころか少しも残らずに全部溢れちゃうんだよ」と。
当時の私はそれじゃ貪汚な人間みたいじゃないか、私はそんな人間じゃないこの人は私の事がわかっていないんだなと思った。今はその通りだったんだなと思う。

私は今日がどれだけ楽しくとも、過ぎてしまった二度と繰り返すことのできない過去が恋しくなってしまう。
好きな歌の歌詞に「寂しい夜に思い出すのは愛した人より愛された日々」というフレーズがある。このフレーズがふとした瞬間に頭に浮かび気付くと無意識に口ずさんでいることが多々ある。
今が楽しい方がいいのなんて当然だ。なのにどうしても過去の方が輝かしく恋しく思えてしまう。

毎日が忙しなく過ぎて私のバケツには止まる事なく人生が注がれ続けている。
人が新しいことを覚えると古い知識を忘れるだなんて何の信憑性もない言葉のように、毎日新しい1日が注がれるたびに今日と愛おしくて仕方がない過去が混ざって濁って薄れてちゃんと思い出せなくなって溢れていってしまう。
手放したくなんてない、私には過去があればいいのに。

そうか、私は今日の楽しかった分が注がれて過去の楽しかったが溢れ落ちてしまうのが怖いから無意識のうちに眠らないようにしてしまっているのかもしれない。
新しい人と出会うたびに愛おしかった人達ですらも去っていってしまうかもしれない。そんなの怖すぎる。嫌だ。耐えられない。
何だかそんな気がしてきて余計に眠れなくなってまた今日が始まってしまう。

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眠れない夜に

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