見出し画像

【ありふれた毎日を大切に】エッセイスト・ライター 江角 悠子さん|人物インタビュー

ライター歴16年、京都在住の江角悠子さんの屋号は『京都くらしの編集室』。ここには、日々の暮らしも編集できるという思いが込められています。「なんてことのない毎日が一番幸せ」と話す江角さん。

屋号からも、日常を大切にしたいという気持ちが伺えます。実際、どのように暮らしを編集し、楽しまれているのでしょうか。その様子を覗かせていただきました。


1)瞑想で心を整える

これからの季節に活躍する薪ストーブのあるリビングで瞑想
「パチパチと薪のはぜる音と炎の揺らぎに癒されます」

家族がまだ寝静まる早朝、軽いストレッチと瞑想から江角さんの一日は始まります。周囲からの影響を受けやすい繊細な気質をもつという江角さんにとって、心の雑音を取り除く瞑想は大切な時間。

やり方は、お気に入りのキャンドルやお香を焚いて、1〜10まで数をかぞえ頭を空っぽに。途中、とりとめもなく色々な雑念が浮かんできますが、そんな時は、“あぁ、また考えごとをしてしまったなぁ”と一歩引き、再び数をかぞえることに集中するのだそう。

大きな窓から見える景色に季節の移ろいを感じながら、このサイクルを繰り返すうちに感覚が研ぎ澄まされ、ある時ふと“私は私でいればいい”と気付いたと言います。そこから、ありのままの自分を受け入れられるようになり、スッと肩の荷が下りたと教えてくれました。

その日一日を穏やかに過ごすために欠かせない習慣、それが朝、心を整えることなのです。

2)ON/OFFを分ける

気持ちをONにするお茶はその日の気分で

平日、小学生と中学生のお子さん2人を学校へ送り出すのが8時半ごろ。そこから仕事モードに切り替えるため、自分のためだけにチャイや紅茶を入れるのが江角さんの日課です。

「フリーランスで、特に事務所を構えていないので、自宅と仕事場が一緒なんです。通勤時間がない分、時間をかけて丁寧に淹れることで、仕事のスイッチをONにしています」。

あえて一手間かけて淹れるのが、ポイントだそう。仕事は、平日の9時〜18時、土・日は休みがマイルール。以前は深夜・週末関係なく働いていましたが、お子さんが生まれてからはこのスタイルに。ONとOFFをきっちりと分けることで、暮らしのリズムを整えます。

3)書くことで自分を見つめる

庭が見渡せる仕事部屋

常に書くことを考えるライターという職業上、頭を完全にOFFに切り替えることは難しく、いつも荷物を抱えているような状態だと話します。

煮詰まって頭の中がモヤモヤする…そんな時は、自身のブログに思いを吐き出します。第三者の視点で書くライターの仕事とは異なり、ブログはあくまでも自分の視点。ありのままの気持ちを綴ることで、自分に軸を戻します。書いて言語化することで、それまでに気付かなかった自分の本心が見えてくることも。

「私にとってブログや日記は、自分を知る大切な手段。頭で考えるより文字にしたほうが、自分自身をより深く理解することができます。そうすると腹落ちして、迷いや不安が減ってスッキリするんです」。

江角さんにとって書くことは、より良く生きるための大切な術。

4)好きなものだけをもつ

暮らしを楽しむためには、日々を彩るアイテム選びも重要な要素のひとつ。特別なイベントより、普段の生活の質を上げることにこだわります。

「最近、タオルを新調しました。新しいものは肌触りも良く気持ちがいいので、それだけでテンションが上がります」とニッコリ。他にも、文房具やスマホケースなど、些細なモノでも自分が“本当に好き”と思えるものを積極的に取り入れることで、何気ない日々に彩りを添えているのです。

普段着る服も例外ではありません。着心地が良く、脱ぎ着がしやすい、そして自分が100%好きなものだけと決めていると言います。

「なるべく顔の見える相手にお金を使いたいので、友人の作った服や弟がデザインしたもの(EZUMi)を愛用しています」。

こちらがそのオールインワン『ANAKIOA』。この時は、腰で結んで

取材当日の淡いピンク色のオールインワンもお友達のブランド。どこか少年のような雰囲気をもつ江角さんに、とてもお似合いでした。

5)自分を耕す時間をもつ

週に一度通っているジムでは、デトックス効果が期待できるホットヨガも

穏やかな口調とおっとりとした雰囲気からインドア派かと思いきや、実はジムへ通ったり、ヒップホップダンスを習ったりと意外にアクティブな一面も。そうした自分を磨くための趣味や時間をとても大切にしている江角さん。

しかし、30代の頃は仕事や育児に追われタスクをこなすのに精一杯。こんな時間が取れるようになったのは、下のお子さんが小学校に入り、育児が少し落ち着いてからのこと。

「あと5年もすれば娘も中学生。今よりもっと手が離れた時に私自身のことも充実させていたいので、今は仕込みの時期だと思っていろんなことをやっています。ただ…効率を求めて、つい詰め込みたくなるんです。本当はもう少しゆとりのある暮らしが理想なんですけどね」と笑います。

とは言え、母でもない、妻でもライターでもない、暮らしの真ん中に「私」の時間をもつことが、日々の幸せに繋がっているようです。


「ささやかな日常や小さな幸せを大切にする」

終始、程よく肩の力が抜けリラックスした印象の江角さん。その姿が自然に映るのは、きっと自分に対して嘘がないから。

書くことで自身と素直に向き合ってきた証です。ささやかな日常や小さな幸せを大切にする、ごくシンプルなことが暮らしを楽しむ一番の近道。江角さんからは、そんなことを教えていただいたような気がします。

※ この取材は2022年9月のものです。

江角 悠子さん ライター・エッセイスト

プロフィール
京都在住25年。『京都とっておきの雑貨屋さん』『京都カフェ日和』など京都関連の書籍の他、さまざまなメディアで執筆。夫・長男(14歳)・長女(8歳)の4人家族。コーヒー/旅/北欧を愛する他、レトロ建築好きなことからデジタルZINE『京都麗しの洋館たち』を発行。ブログでは、普段の京都の様子や子育てエッセイなども。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?