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真夜中のルーティーン第1部(4)
(4)
どうしよう? どうしたらいい?
こんな格好で、ガタイのいい男と、部屋で二人っきり。
とにかく離れよう。
わたしはそおっと廊下を奥に向かおうと背中を向けた。
すると
「エミさん、どうしました?」
どうする? なんていえばいい?
「……あ、いや、お茶でも入れようかなぁって」
わたし、声震えてなかった?
「いえ、気を使わないで下さいね。すぐに終わりますから」
「
真夜中のルーティーン第1部(3)
(3)
いや待て。冷静になろう。まずは深呼吸。
考え直せ。ガタッと音がしたことと靴下が消えたこと。
今起こってるのはこの二つだけ。
確かにわたししかいないこの部屋で
わたし以外に音を立てる者はいないし
靴下を持っていく者もわたししかいない。
でも玄関の鍵を掛けていれば
わたし以外がこの部屋に入れるはずがないじゃない?
そうよ。
そしてもし、鍵が開いてたら……全力
真夜中のルーティーン第1部(2)
(2)
『ホント、できないよね。簡単なことが』
突如その日の最悪な声が頭の中で再生されたのだ。
わたしの上司、オオツボネイコの声。
脳内再生だからシャワーの音にも邪魔されない。
何年もこの業界で残ってきたから仕事はできるんだろうけど
優しさのカケラもなく、言葉に容赦がない。
グサグサと人の心に差し込んでくる。
でも、自分のミスのせいだから言い返せない。
頑張ってミスしないで仕事
『真夜中のルーティーン』第1部(1)
(小説 作・岩崎与夛朗 全1022文字=400字詰原稿用紙約3枚相当)
(1)
深夜0時半過ぎ。
マンションの5階の部屋の前に立つわたし。
「はぁ……」
終電を降りて、今日一日の疲れを肩に乗せて
駅から一人重い足を引きずって帰ってきて
そういうの全部吐き出してから
部屋の重たい扉をわたしは開けたのね。
ううん。別にドアは重たくないんだけど
今のわたしはとにかくそう感じたのよ。