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ミス/ミズ/ミセス、そしてミックス? 敬称の「お作法」

これまで、複数回にわたり「海外の挨拶3点セット」や「新・グローバルスタンダードの挨拶6点」など、グローバルビジネスの挨拶に関する「お作法」をお話してきました。
グローバルビジネスの「お作法シリーズはこちら↓)

そして、挨拶とセットで行われることが、「名を名乗る」こと。

日本の場合、ビジネスであってもそうでない場合でも、初対面または、ある程度打ちける解けるまでは、「で呼び合うことがほとんどではないでしょうか?

一般的には「~さん」、取引先の合は、「~さま」、年齢やキャリアの上下(先輩・後輩)によって「~くん」「~ちゃん」など、コミュニケーションする相手と自分との関係によって「敬称」が使われます。

そしてある程度打ち解けた仲になると、「名」で呼んだり、敬称を付けなかったり、ニックネームで呼んだりするようになります。

さて、グローバルビジネスの場合、「名前の呼び方・呼ばれ方」は日本とどう違うのでしょうか?

これから3回にわたって、「名前に関するお作法あれこれ」をお届けします。

1回目の今回は、敬称についてです。


ミス/ミズ/ミセス、そして ミックス

男性は「ミスター(Mr.)」ですが、女性の場合その人の状況によって呼び方が変わることは、学校の英語の授業でも学びますよね?

ここで、おさらいをしておきましょう。
女性の敬称は、下の図のように呼びます。

● ミス(Miss):成人前の女性(少女)、独身女性
ミズ(Ms.):成人した女性、婚姻状況は不問
ミセス(Mrs.):既婚の女性、離婚した女性、未亡人

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この図にもありますが、女性の敬称は、成人女性かどうか婚姻状況によって区別されます。

日本のようにコミュニケーションをする相手と自分との関係ではなく、自らの状況によって「敬称」が変わるのです。

たとえば、成人女性であろうとなかろうと、既婚女性ならミセス(Mrs.)を使う、と言った具合です。

「ミセス」は、いま現在、配偶者がいる既婚者だけではなく、離婚したり、未亡人になった場合でも使いますので、必ずしもその人が既婚女性とは限りません。

このように、若干複雑な背景もあるため、ビジネスの場面や日常生活の中で、特に婚姻経験のある人に対して、ミズなのか、ミセスなのか、どちらの敬称を使うと失礼にならないかを悩んでいる人が意外に多いからか、Yahoo知恵袋的な相談サイトへの投稿も数多く見られます。

しかし、スッキリした解決策は特になく、

「その人との会話の内容から、彼女が既婚者かどうかを勝手に推測し、彼女の敬称を決めるのは失礼なので、控えましょう。
相手の敬称は相手に好みを聞いてみましょうね!」

というアドバイスに終始することからも、明確な定義はない、と言えるでしょう。

さらに、最近はジェンダーニュートラル(性別による役割認識にとらわれない思考)という時代の流れを受けて、男性・女性の性別を判別しない「Mx.(ミックス)」という敬称も生まれています。

ミックスは、2017年にメリアム・ウェブスター(Merriam Webstar:アメリカ最大の辞書出版社)に登録された「敬称」なので、これから一般社会にも認知が広まっていくでしょう。


ビジネスの場での敬称

ビジネスの場面でも日本人同士では、「で呼び合うことが浸透しています。

社内では「名(ファーストネーム)」やニックネームで呼び合うこともあるかも知れませんが、取引先やお客様などの社外に対しては、ほとんどの場合、

 ●「姓+さん」
 ●「姓+さま」

と、呼んでいるのではないでしょうか?

ファーストネームで呼んではいけない、というルールはありませんが、
常識として相手をファーストネームで呼ぶのは、親しい間柄でない限り抵抗を感じる人が多いかも知れません。


グローバルビジネスの場合は、「姓」よりむしろ、「ファーストネーム」で呼び合うことが浸透しています。
目上の人であっても、取引先やお客様であっても、ファーストネームで呼び合うことが一般的です。

また、日本のように「~社長」「~部長」などの肩書で呼ぶことはありません。

もちろん、ビジネスの業種・業界や会社の文化によってはファーストネームよりむしろ、Mr./Ms.やDr.などの敬称を付けて呼ぶ慣習もあります。
その場合は、慣習に従います。

敬称で呼び合う場合の女性の敬称」は、

ミスでもミセスでもなく、ミズ(Ms.)を使う

これがグローバルビジネスの大原則です。

ちなみに、政治的地位の高い方(大統領・首相、議員)や特定のカテゴリに入る方(王族・首長、貴族、聖職者など)、専門職(医者、教授など)に対しては、敬意を表す意味で、「特別な敬称」を使います。
※ミスタープレジデント(大統領)、ドクター(医者)など


基本はファーストネームでOK!

女性の「敬称」の呼び方は、ルールが明確でないものの、ミズであることをご理解いただけたかと思いますが、ビジネスであっても、プライベートであっても、通常は、

ファーストネームで呼ぶ

で大丈夫です。

もし、敬称かファーストネームか、迷ったり失礼がないか不安になったりした場合は、

◆ 「敬称+姓」呼び方の例 ◆
ロバート・スミスさんの場合:
 「ミスター スミス」
マーガレット・スミスさんの場合:
 「ミズ スミス」

※現段階では、ジェンダーニュートラルの「ミックス スミス」と呼ぶのは、あなた(または相手の人)が「ジェンダーニュートラル」である場合

と、呼んでみてください。

呼ばれた本人が、タイミングを見て
「僕のことは、ロバートと呼んでくれていいよ!

と、教えてくれるので、それをきっかけにファーストネームに切り替えれば大丈夫☆

それでも抵抗がある場合は、

いっそのこと「さん付け」する

というのも手です。

海外の人たちは、意外に日本の敬称「〜さん」を知っています。
「〜さん」は、お辞儀同様、相手の尊重を示すための、日本語の敬称であることも知っています。

そのため、もし迷ったら、

「ロバート(ファーストネーム)さん」
「マーガレット(ファーストネーム)さん」
「スミス(姓)さん」

これで大丈夫です。
※「〜さま」は使いません。

私自身の経験では、ミスターやミズなどという敬称を使って仕事をしたことは、これまでのところ、まったくありません。

上司であろうとお客様であろうと、そしてCEOなど、地位の高い人であっても、ファーストネームで呼んでいます。

ただ、雰囲気的に
(なんとなく「さん付け」した方が、話しやすそうなぁ..)
と、自分で感じたときは、「さん付け」しています。

これも特に根拠はなく、CEO(企業の最高経営責任者)などとても地位の高い方や、なんとなく威圧感のある雰囲気の人と話すときに、「その相手と、どの程度まで打ち解けられそうか」、を見極めるために、「さん付け」をしています。


いかがでしたか?

姓で相手を呼ぶことを「お作法」としている私たちにとっては、いきなり相手のファーストネームで呼ぶことは、ちょっと抵抗があるかも知れません。

ファーストネームで呼ぶこと自体は、失礼ではないので、構えずに気軽に臨んでいただけたらと思います。
ただ、ファーストネームの呼び方には注意が必要です。

そう。前回(↓)から引っ張っている「ロバートさんの呼び方問題」。


次回は、「ロバートさんのいったい何が問題」なのか?
いよいよ真相を明らかにしていきます。



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