インド人といえばターバン! それ、誤解ですよ〜
シーク教の人たちは、ベジタリアンが多いですが、牛以外の肉食は認められていること、ただし、「お肉の要件」は非常に厳しく、動物をどのように、屠殺したのかによって、クッタ肉(食べてはいけない肉)ジャッカ肉(食べてもいい肉)に分けられること、をお話しました。
(食べてもいいお肉、詳細はこちら↓)
日本ではあまり知れ渡っていないシーク教について、
シーク教の人たちはターバンを
巻いていますよ~
と触れたところ、
インド人といえばターバン!
と、日本ではイメージされているようである・・ことを、くなんくなんさんがコメント欄から教えてくださいました。
くなんくなんさん、ありがとうございます!
くなんくなんさんは、過去にシンガポールに住んでいらしたとのこと、昔のシンガポールを懐かしむ記事は、いまのシンガポールの姿と比較しながら読むと、さらに面白いですよ☆
さて、くなんくなんさんからいただいたコメントを拝見して、
(う~ん、
インド人 = ターバン
それって、
日本人 = カメラとメガネ
と、まるでおなじノリじゃないのかなぁ?)
と、思った私。
「インド人 イラスト」で検索してみると、確かにターバンとカレーのイラストが真っ先に表示されます。
(シーク教のお話をしている、いまこそ、ターバンの誤解について触れるチャンスかも・・)
私個人の経験ですと、これまで多くのインドのビジネスパートナーと、接してきましたが、ターバンをしていた人は、ごく少数でした。
ということで今回は、「シーク教の人たちにとってのターバンとは?」について、ご紹介します。
インド国内のシーク教の人口比率
インドの人口約80%を占めるヒンドゥー教の人たちは、髪を切ってはいけないルールも、ターバンを巻かなければいけないルールもありません。
そう。
ターバンを巻いているのは、インド広しといえど、人口比率2%にも満たない、シーク教の人たちなのです。
人口13億人を擁するインド、たった1.7%といっても2,000万人強。
日本の人口1億2,600万人に対する比率に置き換えると、約15%です。
それでも2,000万人は、決して少なくない数字ですが、インドでは超少数派。
たとえ、シーク教の人たち全員がターバンをしていたとしても、インド国内の残り12億8,000万人は、宗教上、ターバンが必須ではない人たち・・と考えれば、
インド人 といえば ターバン
は、やっぱり言い過ぎなんじゃないかな~、と思うのは、私だけでしょうか?
シーク教の5つのK
シーク教では、ターバンを含めて、守らなければならないことが5つあります。
すべてKで始まるので、「シーク教の5K」と呼ばれており、洗礼を受けたシーク教徒は、これらを守らなければなりません。
シーク教では、洗礼を受ける年齢に規定はありません。
「洗礼を受けるにふさわしい」と判断されたときに洗礼を受けます。
これは私の主観ではありますが、家父長制の厳しいといわれるシーク教なので、ほとんどの場合、成人する前に洗礼を受けるのではないかと想像します。
洗礼を受けるにふさわしいかどうか、の判断は、5つのKを守ることができるか、ということが基準のひとつになります。
5つのKのうち、3つは次の通りです。
● カラ(Kara):
鉄のブレスレットを身に着けなければならない
(右腕が推奨されていますが、左腕でも良いようです)
● カーパン(Kirpan):鉄の短剣
身を守るためにだけ使用が許される短剣で、ストラップに納め、常に携帯しなければらない
※国内線であれば、刃の長さが6インチ(約15センチ)以内であれば携帯・持ち込みが許可されていますが、国際線は2.5インチ(約5センチ)以上のカーパンは、手荷物・機内持ち込みともに禁止されています
● ケンハ(Kangha):
小さな木製の櫛を常に携帯しなければならず、毎日2回、髪を梳かさなければならない
※プラスチックでも良いようです。
写真で見るとイメージしやすいかも知れませんね。
残り2つのKは、次の通りです。
● ケシュ(Kesh):
髪を切ってはならず、男性はターバンを巻かなければならない
● カシェラ(Kachera):
長めのコットンの下着(パンツ)を身に付けなければならない(↓)
これが、シーク教の洗礼を受けた人(男性)のドレスコードです。
カーパン(短剣)は小さいですね!
ケンハ(櫛)は、髪の中に納めています。
ターバンを身に着ける理由
前置きが長くなりましたが、ここからターバンのお話に入ります。
繰り返しになりますが、洗礼を受けたシーク教徒は、髪を切らず、特に男性はターバンで覆います。
上に挙げた通り、シーク教の人たちが髪を伸ばす(切らない)ことをケシュ(Kesh)といいます。
ケシュを保つ(髪を切らない理由)としては、
● 髪を通じて神様とつながるため
● 自尊心を構築するため
● 勇気が湧いてきて、恐怖に打ち勝つことができる
● 無条件の愛を実感することができるため
● 長い髪は、精神的に皆を結びつけ、同じ宗教の者同士が、精神的・社会的目標に向かって努力していることを、実感することができるため
● 現代のシーク教徒と過去のシーク教徒を結びつけるため
● 神様の創造した私たち人間の身体はすでに神聖であり、身体(髪)に手を入れる(髪を切る)必要がないとされるため
などの理由があります。
ケシュはシーク教の人たちの制服であり、アイデンティティなのです。
そして、ターバンは、シーク教の教祖が身につけていた霊的な王冠だと言われています。
シーク教の人たちがターバンを身につける理由には、いくつかあります。
● 教祖と同じもの(王冠)を身につけるため
● 頭を「意識」とみなす場合、ターバンはその意識が鎮座する玉座であるとみなされているため
このような理由から、ターバンは、最高の敬意をもって扱われます。
そのため、ターバンを外すことには、非常に慎重になるのです。
女性にとっての厳しい現実
女性の場合、(右上の女性の写真のように)ターバンを身につけることは「男性的すぎる」ということで、結婚に適さないと、みなされることもあるため、身につけない女性もいます。
ただ、最近のムーブメントでは、教えの原点に戻るということで、ターバンを身につける女性も増えてきているようです。
また、シーク教徒の女性にとって、体毛を残すかどうか、は議論の的になることも多いようです。
女性の髪や体毛に対するポリシーは、生まれ育った家庭(家父長制度)や環境に影響するようです。
もし髪を切ってはいけないのであれば、体毛も処理してはいけない、と解釈している家庭で育った女性は、たとえば眉1本を抜くことも禁じられます。
体毛を処理しないと、敬虔なシーク教徒であると認められる代わりに、男性からは敬遠され、夫を見つけるのは難しいと言われてしまう、逆に体毛を処理すると「欧米かぶれ」と揶揄されてしまうという、現実があるようです。
つまり、シーク教の女性は、シーク教上の「道徳」から見て緩すぎてもいけない、しかも男性的になりすぎてもいけない、その狭間の中で、女性としての信条を見つけていく必要があるということです。
シーク教女性モデルの信条
イギリスを拠点に活動する、モデルで、シーク教徒のハルナーム・コール(Harnaam Kaur)さん(30歳)は、ヒゲのある最年少の女性として、ギネスブックに登録されました。
ハルナームさんは、11歳のときに、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)という、卵巣で男性ホルモンが増えすぎるがゆえに、顔にヒゲが生えてしまう病気を患い、いまに至ります。
数々のいじめに遭ってきた彼女は、シーク教徒の洗礼を受けるときに、自分のありのままの姿を受け容れる決心(つまり、髪は切らず、体毛も処理しない)をしたとのこと。
彼女のこの行動と信念が、将来、ジェンダー規範や美の基準の転換に影響を与えていくことになるのかも知れません。
ハムナールさんの活動をもっと知りたい!と思ったあなた、こちらの公式ホームページからご覧いただけますよ☆
いかがでしたか?
インドの人といえば、ターバン説は、ステレオタイプかも・・の件、伝わりましたでしょうか?
次回は、もうひとつ、宗教人口は決して多くはないものの、インドでは、やはり世界最大の信者数を持つ、ジャイナ教の、生きとし生けるものの命を尊重する「お食事の要件」について、ご紹介します。
そして、あなたがゲストをおもてなしすることになったら、役に立つ・・かも知れませんので、来たるべき日にそなえ、一気に参照できるよう、「お食事の要件」をマガジンにまとめておきますね☆
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