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【私の新刊紹介】第3章・「ジェンダー」をめぐる歴史と文化

4月23日に発売される私の新刊『男はスカートをはいてはいけないのか?-キャリコン視点のジェンダー論-』の内容についてご紹介していますが、今回はいよいよ「第3章 『ジェンダー』をめぐる歴史と文化」です。この本は歴史や文化、法律や制度の視点から解説する法文系の私と、サイエンスや医学、生命科学などの角度から著述する医科学系の神田くみさんとの共著になりますが、第3章は主に私が担当している章になります。第2章の目次は、以下です。

第3章 「ジェンダー」をめぐる歴史と文化
3-1. なぜ男性はスーツを着なければならないのか?
3-2. なぜ女性はメイクしなくてはならないのか?
3-3. 女性の容姿とビジネス上の評価の関係
3-5. 美人はNGでイケメンはOKの不思議
3-6. 成人式の振り袖と卒業式の袴姿
3-7. 制服、校則の今とジェンダーフリー
3-8. 男性をめぐるファッションやメイクの新潮流
3-9. ジェンダーニュートラルの潮流
 Case-1:機内アナウンスの変更
 Case-2:男性名詞、女性名詞の廃止
 Case-3:男女分類しないユニセックスなファッション
 Case-4:性別を限定しないジェンダーニュートラルトイレ
 Case-5:会議の発言をAIにより男女別に分析する

第3章 「ジェンダー」をめぐる歴史と文化

3-1. なぜ男性はスーツを着なければならないのか?

最近では必ずしもそうでもなくなりましたが、ビジネスシーンでは決まって男性はスーツを着ることを義務づけられ、女性は男性よりもカジュアルな服装が認められがちです。就職活動のときは男女問わずリクルートスーツなのに、社会人になるとあっという間にこのような違いが生じることに疑問を持つ人は少なくないと思います。本書では、このような取り扱いの違いや社会的な慣習の背景には単なる表面的なドレスコードにとどまらない根深いジェンダー問題がひそんでいると理解し、さまざまなハラスメントや人間関係の軋轢などのテーマにつながると仮説しています。本質的な「女性差別」の解消に向けた見取り図を射程にしていることも踏まえて、何気ない慣習にひそむ根底的なテーマに迫りたいと考えます。

3-2. なぜ女性はメイクしなくてはならないのか?

昨今はメイクをする男性も増えつつありますが、今の日本ではまだまだ圧倒的に「メイクは女性のもの」という発想が根強いです。それは、「女性だからメイクをしなければいけない」のか、それとも「男性はメイクをしてはならない」という規範が存在するのか。このような問いについて、ふだんから真剣に考えている人はあまり多くないと思います。いわゆる「男女役割分担論」と男性と女性をめぐる性表現の今と昔、そして未来について、ここではメイクというテーマについて取り上げています。メイクをしても男性的と見なされる例、メイクをしなくても女性的と受け止められる例とは。平安貴族、中世の武士、明治政府の政策、戦後のジェンダー観などの歴史の変遷にも触れながら、職場のルールの理想と現実などを踏まえて、みなさんと一緒に考えたいと思います。

3-3. 女性の容姿とビジネス上の評価の関係

今の世の中では、男性に生まれるのと、女性に生まれるのとでは、明らかに周りからの扱われ方や受け止められ方が違います。その最たるものが、「容姿」に関する意識かもしれません。女性は周囲からファッションやスタイルについて評価される目線を強く感じるにに対して、男性は外観的な評価以上に内面的な資質や仕事の成果がダイレクトに問われることが多いでしょう。このような違いは、どちらが良いか悪いかという問題ではなく、明らかにそれぞれの性別が生き方や働き方をめぐる価値観や行動に影響を与えているところに特徴があります。ビジネスシーンにおいても、一般論としては容姿は悪いよりは良い方が有利だと思われがちですが、実際はどうなのでしょうか。本書では、ドレスコードをめぐる個性や機能性というテーマもからめて、興味ぶかい仮説について紹介しています。

3-5. 美人はNGでイケメンはOKの不思議

昨今は、いわゆるルッキズムが重要視される風潮が強いといえます。従来であれば「美人」「可愛い」といったプラスイメージの言葉が問題視されることはあまりありませんでしたが、今では言葉によるハラスメントと受け止められてさまざまな人間関係の悪化や労務問題に発展するような例も少なくありません。ところが、女性に対する「美人」はNGでも、男性に対する「イケメン」はOKだとする受け止めもあります。いっけんすると明らかな矛盾と思われますが、なぜこのような規範が根づいているのでしょうか。本書では、その理由を典型的な性別役割分担論に求めます。行き過ぎた分担論は男女の非対称性を増幅させていったと考えられますが、その副作用がこんにちの私たちの社会を襲っているという見方もできると思います。

3-6. 成人式の振り袖と卒業式の袴姿

成人式での振り袖、卒業式での袴姿。日本古来の和装で人生の節目を過ごす慣例は奥ゆかしいものであり、多くの日本人の感受性にも合致しているといえるでしょう。ところが、これらの式典などで晴れ着を着るのは決まって女性であり、最近は羽織袴姿の若者も見られるようになったとはいえ、和装する男性の存在はきわめて少数派だといえます。そもそも、振り袖などの晴れ着を女性のみが着るという習慣は、「差別」なのでしょうか。「特権」なのでしょうか。本書では、和装文化の歴史の変遷を具体的に振り返りながら、振り袖や袴の現在的な意味についてとらえ直しています。日本では長らく、男性=洋装(スーツ)、女性=和装という文化が共有されてきましたが、このようなあり方も曲がり角にきているのではないかという見立てについても触れています。

3-7. 制服、校則の今とジェンダーフリー

最近は制服の自由化、ジェンダーレス化をめぐるニュースが多いです。多いときは毎週のようにテレビや新聞、そしてネット媒体で飛び交っているともいえます。しかし、ジェンダーフリーとされるのはもっぱら女子の制服が選択制になってスラックスがはけるようになったというケースばかりで、男子のスカートは今なおタブーとされている矛盾もあります。また、学校での生活をめぐる校則についても、はたして学業を行う上で義務づけられるルールなのか、まったくもってナンセンスだと思われるものもたくさんあります。本書では、これらについて具体的な現状に触れつつ、これからの世の中に向けたメッセージを紹介しています。

3-8. 男性をめぐるファッションやメイクの新潮流

男性のメイクもだんだんとタブーではなくなってきました。デパートはもちろん、ドラックストアなどにもところ狭しとメンズ向け商品が陳列されています。ところが、このような男性のメイクについての受け止めには抵抗感を持つ人もまだまだ多く、基本的には世代が上がるほどにその傾向は明らかに強くなるといえます。もちろん価値観は人それぞれではありますが、世代が上がるほど社会における地位や役割が高く影響力を持つ人が多いことから、現実問題としては若い世代の自由な表現や感性の具体化の妨げになっているのも実際です。本書では、このような根強い社会通念のバックボーンについて検討しつつ、これからの社会に向けた変化の見取り図を示しています。

3-9. ジェンダーニュートラルの潮流

この章の最後は、「ジェンダーニュートラル」です。「ジェンダーフリー」「ジェンダーレス」などとの違いについて整理した上で、私がジェンダーニュートラルについてSNS上で実施したアンケートの結果やリアルなナマの声などについても紹介しています。章の末尾では、機内アナウンス、名詞、ファッションなどのジェンダーニュートラルの具体的な事例についても取り上げていますので、ぜひ参考にしてください。


4月23日発売予定の本書は、すでにアマゾンでも予約開始されています。書籍の詳しい概要も記載されていますので、気になる人はぜひ以下のページをご覧ください。


学生時代に初めて時事についてコラムを書き、現在のジェンダー、男らしさ・女らしさ、ファッションなどのテーマについて、キャリア、法律、社会、文化、歴史などの視点から、週一ペースで気軽に執筆しています。キャリコンやライターとしても活動中。よろしければサポートをお願いします。