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【溺れる君】ゲーム

一番最初

番外編


 ここでも詰め込むのは良くないということで、晩ごはんまでゲームをするんだ。

今日はモノマネ選手権で、お題は『猫』。

まずは自称猫好きでモノマネの実力は自他共に認めるくらい上手い夜彦。

「ニャオーン!」

夜彦は急に叫んだ。

「さい、あく!」

厳しく吐き捨てるようちゃん。

「どげざしたら、ちゃんすあげるわ」

真昼も鋭く睨んだ後、ニヤリと笑う。

「申し訳ございません! ちゃんといたしますので、どうかご配慮くださいませ」

頭を擦りつけるように正座をした夜彦。

確認だけど、夜彦が長男なんだよね?

「いいかどうかはゆうちょがきめるわ」

黙っていた僕を2人がニヤニヤしながら見つめてくる。

夜彦は少し頭を上げ、潤んだ瞳が上目遣いになっていた。

「ちゃんとやる?」

「もちろんでございます!」

「ふざけたら3日間連続で凌辱するからね」

「あっ、それは……ご褒美になるかと」

「黙ってはいと言えば良い」

「はい、承知いたしました!」

軽く前戯のようなコントのようなやり取りをした後、夜彦は深呼吸をした。


 すぐに頬を両手でふにふにと撫で始めた。

「みぁ、ミャー……ミャオーン」

「犬入ってない?」

「ワオーンっていうてるやんな」

ようちゃんと真昼がすかさず突っ込むけど、夜彦はニャ、ニャと言いながら丸めた手で顔を撫でる。

「もう1回、やって?」

僕の要望に左あごのほくろが際立つように口角を上げた夜彦は両手を構える。

「ミャオーン……ヌッ!」

粘りが強いように鳴いた夜彦は右目でウインクをした。

「寄せてもうてるやん!」

真昼の言葉にようちゃんと僕が爆笑すると、夜彦もつられて歯茎を出して笑ったんだ。

 
 次はナンバー2の真昼。

いつもは表情豊かなのに、この時だけ真顔になるんだ。

両手を構えてうつむく真昼。

「なんか拳法みたいになっておりますね」

夜彦はさっきの仕返しのように言う。

ようちゃんはご満悦のように高笑いをする。

「シャー!!」

勢いよく顔を上げて僕を睨み、両手を激しく上下に動かすから、僕はビクッとした。

シャー、シャーと吠えながら爪を立てる姿は怒っているのだと、見たことのない僕でもわかった。

気がすんだのか、フッと笑った真昼は右手を丸めておでこを拭いた。

「にゃあん、にゃ♪」

高くて柔らかい声を出してかわいい感じを演出したから、思わぬギャップにキュンとしたんだ。


 そして、お待ちかねのようちゃん。 

憑依型みたいで、結構リアルだと評判なんだ。

ようちゃんは深呼吸をした後、人懐っこく微笑む。

「んーんー、んにぁ、んにゃにゃ♪」

丸めた手を頬にくっつけて、甲高い声で小さく鳴いている。

「んにゃあ、ごろごろにゃあ♪」

甘えたように叫んで僕に抱きついてきた。

僕は抗うことなく、背中に腕を回した。

ペロペロと僕の耳から頬、そして首筋を舐める。

そのついでのようにチリッと噛んで、また痕をつけたんだ。


 見事な猫のモノマネに圧倒された僕は恥ずかしくなる。

「俺たちのを参考にしたら出来るから」

「とりあえずやってみいや」

「どんなものでも受け入れますよ」

3人が優しく微笑むから、僕は意を決して両手を丸めた。

恥ずかしい、恥ずかしい……ニャ、にゃ!

「にゃ……にゃあ?」

左手が上になるように構えて、撫でるような甘い声を出してみた。

3秒固まった後、かわいいと言われて3人に抱きつかれた。

 3人に甘やかされるのが僕の日常なんだ。

続き

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