【溺れる君】トトとカカ
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話をしているうちにながいとおもっていた道もおわりそうになってきた。
なんとなくさびしくなったぼくはうしろを向いたんだけど、見たこともないケシキが広がっていたんだ。
アカい箱はぼくらがさっきいた部屋
それをまんなかに
あおの中にミドリの点がある箱
オレンジの箱
ミドリの箱が回っていた。
「なんか、すごいね」
うまくことばが出てこなくてがっかりしたぼく。
「うちゅうっていうんやでぇ」
ふわふわしたカンサイベンで言う方を向くと、まひるはふふんと鼻をならす。
「う、ちゅう……?」
はじめてきいたことばをぼくはゆっくりくりかえす。
「俺らがいた場所……俺の部屋を太陽として、青と緑は地球、オレンジは火星、緑は木星なんだ。ゆーたんの部屋もきっと惑星の色になるよ」
ようちゃんが低い声でゆっくりやさしく教えてくれた。
それでぼくはやっとカレらの髪の色のイミがわかった気がした。
ようちゃんは太陽、まひるは木星、やひこは火星だからなんだと。
その弟になるぼくの色も惑星になる……それがカレらとつながるキズナになるんだと。
でも、まずはうちゅうそのものをベンキョウしなくちゃいけないっておもったんだ。
「水金地火木土天海、でございます。詳しいことはトトとカカに聞いた方がよろしいかと存じます」
天文学者でございますから、とやひこはうれしそうに言い、おほほほほと自分がすごいみたいに笑った。
トトとカカ……きっと3人の両親なのだろう。
そして、ぼくの両親になる人にいづれかは会うのだからキンチョウしてきた。
「大丈夫、きっと気に入ると思うよ」
そのことばとともにトントンとせなかをたたいてくれたのはようちゃんだった。
この3人の親だから、信じよう。
ぼくはカクゴを決めて、のこりをおりていった。
「トト、カカ……我々で夕馬と名付けました。よろしいでございますか?」
キッチンに立つちゃいろい髪の人とテーブルで大きいかみを広げているクロい髪の人に声をかけるやひこ。
かいだんをぜんぶおりたぼくは2人がこっちを向いたのを見て、ペコリとあたまをさげた。
「ほぉ、礼儀正しい子やな。今日からここの子やから楽にしぃや?」
一重にみえるけど二重な目ととふっくらとしたくちびるを三日月のかたちにしてやさしい声で話しかけてくれるおとこの人はたぶんトト。
すこしすくるくるした髪型にさんかくの鼻だから、カッコいい。
「ごめんなさい、お兄ちゃんたちうるさかったでしょ? 落ち着きたくなったらいつでも私たちのことを頼っていいからね」
おでこに大きいほくろ、二重でくりくりした目でぼくをやさしく見つめているのはカカなのだろう。
がさがさした声がひくめなのに、ことばはおんなの人だからどっちかわからない。
やさしそうな2人でよかったけど、なんとなくむねがモヤモヤしているから、よろしくお願いしますと言えなかったんだ。
「ゆーたん、座って待っといて」
ようちゃんが引いてくれたイスににチカラなくぼくはすわる。
「カカ、味どう?」
「ちょうどいいわ……はじめてなのに、良くできたわね」
カカにすぐにはしっていったようちゃんがほめられてあたまをなでられている。
「トト、本当に夕馬を弟にしてよろしいのでございますか?」
「ああ。その代わりちゃんとお前らでお世話するんやで」
立ち上がったトトより先にいったやひこが四角いものをもち、トトのコップへアカいものをながす。
トトはやさしい目でやひこを見て口のはじっこを上げる。
「もちろん! ちゃあんとみんなでかわいがるもん!!」
かわいい笑顔でそう答えたまひるをよろしくなと言ってほほえむトト。
ぼくには、まぶしすぎるとおもったんだ。
続き
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