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論文の要約

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アート系の論文の要約、学術的意義を自分でまとめています。
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#モダニズム

【要約】R・クラウス「アヴァンギャルドのオリジナリティ」(1985)

(1)要約

本稿の目的は、20世紀以降発展していったアヴァンギャルド芸術がオリジナリティという要素を求めたことを考察するものである。この考察では、ロダン彫刻の複製制度を指摘し、新しさを求めるアヴァンギャル芸術の作品にはオリジナリティを見出そうとする試みであることを明らかにしていく。ここでいうオリジナリティとは、「形式的な発明というよりは、生命の源を指示する有機体論的メタファー」であり、「根源的な

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【要約】天野知香「「装飾」の潜在力」(2019)美術フォーラム21 第40号

【要約】

本稿は、美術フォーラムの特集「「装飾」の潜在力」にあわせて執筆された論考である。本稿では、ルネサンス以降から近代、現代までの装飾や文様の捉え方や解説したうえで、1970年代という時代は美術(特に絵画)や装飾について大きく価値を変えようとした転換期にあたると考察している。その中で1970年代に活躍したがアメリカの美術評論家エミリー・ゴールディンを紹介している。
エミリー・ゴールディンは同

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【要約】ロザリンド・クラウス「グリッド」『アヴァンギャルドのオリジナリティ』(1978)

(1)要約

本稿は、近代芸術作品における「グリッド」表現を考察している。この考察では、グリッドが近代以前に作品の表彰として現れなかった近代特有の表現であることを明らかにしている。

まず、クラウスはグリッド表現には、「近代(モダニティ)を宣言する方法」として二種類の要素ー空間的なものと、時間的なものがあると主張する。
空間的な要素
空間的な要素において、グリッドは芸術領域における自律性を示す。そ

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【要約と学術意義】谷川渥「ジャンルの解体」『表象の迷宮 : マニエリスムからモダニズムへ』

(1)要約
谷川は本稿において、絵画や彫刻の境界が流動化し、名称と実態がますます乖離してきているように見える事態を「ジャンルの解体」と定義し、彫刻と呼ばれるジャンルが、絵画は純粋化や自律性を目指していった動向に比べ、逆にジャンルとして拡張され、曖昧になったと主張している。それは、グリーンバーグやフリードの指摘するフォーマリズムを擁護したモダニズムの思想を逆説として現れた現象として捉えることできると

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【要約と学術的意義】高階秀爾『20世紀美術』ちくま学芸文庫(1993)

(1)要約
高階は『20世紀美術』において、20世紀以降の美術作品は「実験的」であると定義している。かつて20世紀以前の美術作品では、様々な要素が調和し組み合わせられてひとつの秩序を作り出していく世界観に基づいていた。しかし古典主義崩壊以降、統合されていた様々な要素が「分離」し、その要素を「強調」し、芸術作品の「純粋性」を求める傾向にあるという。
一章では「オブジェとイマージュ」と題し、絵画はそも

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【要約と学術的意義】アドルフ・ロース(伊藤哲夫訳)『装飾と犯罪―建築・文化論集―』

(1)要約
アドルフ・ロース(1870-1933)の『装飾と犯罪』を中心に、素材と技術、それに伴った目的を重要視する建築論をはじめ当時のウィーンやヨーロッパの街並みや建築文化の傾向、また彼の交友関係である芸術家たちとの交流の文章やエッセイが23項収められている。
ロースは『装飾と犯罪』において、装飾表現について強い批判を行う。例えば、パプア人における顔面の刺青は自分を飾りたいという欲求の表現である

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【要約と学術的意義】藤井匡「隠喩としての装飾:伊藤誠の彫刻の表面」

(1)要約
本論の目的は、全体像を把握することが困難な伊藤誠の彫刻を、その彫刻の形態と表面の剥離の問題から論じることでその困難さを明らかにすることである。

伊藤誠自身の彫刻を「一見何がなんだかわからない物」を目的としている。しかし、その目的は新しい造形を作り出すことではなく、鑑賞者の視線の変化によって得れる造形の特徴である。このような作品は、伊藤の作品においてメッシュを使った彫刻作品に現れる。そ

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