見出し画像

世界で5人に1人が視ている(?)ウクライナ報道とは

中国のウクライナ報道は・・・


前に中国でのウクライナ報道のテーマを取り上げてから、もう3週間あまり。

今では停戦交渉に注目が集まり状況も変わっているが、今の中国でのウクライナ報道はどうなっているのだろう。「世界の人口の20%近くを占める人たち」は、どういうウクライナの映像を見ているのだろうか。

そう、あくまでざっくりとした数字上の、”おおげさな例え”だが、こんなにたくさんの人が視るものは、どんな内容であれ「その影響を無視できない」かもと思ったのだった。

前回読んでくださった方は覚えていらっしゃるだろうか。↓


前回視た国営テレビCCTVの夜の看板ニュース番組では・・・

ウクライナ情勢は、終了数分前にちょっと触れただけで、被害の映像はほとんどなし。避難民の声もなし。そして、アメリカの専門家なる人物が欧米の動きを批判。

その一方で、SNSでは、現地在住の中国人の隣国への避難生リポートなども。

また、夜7時のニュースを視てみる


さて、もう一回同じ番組「新聞聯播 (xīnwén liánbō)」の最新版を、
ネットで最初から視てみることにしよう。

(注: 当記事では政治的な議論や、特定の国や業界を一括りにした誹謗中傷はしたくないと思っていますので、ご理解願います。また、今も何百万人もが戦火で家に帰れない状況に胸が押しつぶされそうになる中で、敢えて冷静にウォッチングしてみます。)

このニュース番組は、面白いものではないため普通の人は視ていないとも言われるが、今中国社会でどう考えるのが「politically correct」なのかを知る指標だ。

じっくり視たことのある人は、日本ではほとんどいないと思うので、この機会に一緒に見ていただければと思う。

さあ、あのテーマ曲とともに、始まった。
今日は通常通り30分バージョンだ。

最初は、党中央政治局常務委員会のニュース。
東方航空機の墜落事故について。習近平総書記が議長を務めたという。

そして、大まかに、次のようなニュースが続く。

・アフガニスタンを巡る地域の外相会議に習近平総書記が、挨拶文を寄せる
・習総書記が、植樹活動(全国で緑化活動)

そして、李克強首相が、再選されたポルトガルの首相を電話で祝福。

その後は、
・有人宇宙飛行
・党の選挙
・考古学の十大発見 など

さらに、
・新型コロナ。全国各地で人々がボランティアで感染防止に尽力。

続いて、政治協商会議の幹部に、腐敗した悪い奴がいて処分したと言う。

さらに、経済指標や、飛行機墜落の事故調査委員会のニュースなど・・・

そして・・・

番組終了間際! やっと出てきた ウクライナ情勢


しかし、番組が始まってから、もう24分も経っている。
あと数分で番組が終わってしまうではないか。

タイトルは、
「ドンバス地区でロシア軍が“行動“を強化 ウクライナは”対抗する準備が出来ている”」

なるほど、ロシアは「攻撃」ではなく「行動」なのか。

そして、ロシア軍を示す、すっかり有名になった「Z」マークが、出てきた。
市民に援助物資を配っている。人々の声はない。

ゼレンスキー大統領は、ほんの数秒。声は無し。

攻撃の被害を示した映像は、どうやらこれだけ。↓

戦闘の映像も、泣き叫ぶ市民や不安げな避難民の顔も、破壊された学校も、何も映らない。私にはこれが一番違和感があった。コメントも何もなく、この映像が数秒出ただけだった。

リアルな戦場の実態を示す映像が、ない。

タイトル「ロシア曰く”ウクライナとの外相会談は拒否せず”」
主語はやはり・・・ロシア。建物の映像ばかりが流れる。

そして、私が思う「黄金のパターン」が出た!?
つまり、”欧米の研究者なる人が、欧米を非難する”というパターンが。

今回のインタビューは、
「コロンビア・アジア問題学者(??)」という肩書きの、”なんとか”さん。誰だろう? 著名な方なら私の無知が恥ずかしいが。

この方は、「西側の対ロシア経済制裁は平和的解決を遠ざけるだけだ」と欧米を批判。中国政府の考えを擁護してくれている形だ。

「コロンビア・アジア問題学者」って?「コロンビア大学」じゃなくて!?
で、なぜ、ウクライナ問題でアジア問題?ん?
彼が一体誰かを知る手がかりが何かないかと、画面をよく見てみると・・・

後ろの右の棚には、Chin(a?)… Colom..という文字が見えるが、コロンビア大学だったら、Col"o"mbiaではなく、Col"u"mbiaだから、ああ、コロンビアは、南米の国のコロンビアなのか。じゃあコロンビアのどこの機関の方?評論家として著名な方なのか??

ウェブでは中国語で書かれたインタビュー記事はあるが、名前のローマ字表記はなく、肩書きも書かれていない。英語の記事はまだ見つけられていない。もしご存知の方がいたら教えてほしい・・・(コロンビアが国名のコロンビアなら、”欧米の学者に欧米を批判させる”という黄金のパターンではないかもしれませんが・・)

その後、ヨーロッパの、ロシアからの天然ガスの問題

そして、次は
「ロシア曰く”ウクライナで生物兵器の開発に関係していたアメリカ人の名前が確定された”」と、ロシアの主張。

そして、

ウクライナのニュースが終わった。が・・・


コロナ感染者数などのニュースに続いて・・・

「イラン外務省がアメリカの対イラン新制裁を非難」
・・・ああ、また、アメリカだった。

そして、それが終わると・・・

「今年アメリカの第一四半期に銃関連の事件で死亡した人は1万人を超えた」
うわっ、また、アメリカの負の面だ。
(英語で検索してもなかなかこのニュースは見つからず)

そして、最後に出たのが・・・日本。
「福島第一への処理水放出への反対署名が18万筆」・・・

以上が、30分間の大まかな流れだ。

やはり、前回と同様・・・
*ウクライナ情勢は、番組の終了直後に数分間のみ
*戦闘や、被害の映像、被害者の顔や声は、なし。
*外国人の(今回は欧米ではない?)学者”なる人”が、欧米の対応を批判
*アメリカは、悪い

・・・というパターンだった。

皆さんは、どう感じられただろう。

中には、「中国は、やっぱり・・」「いや、西側だって・・」「そもそもアメリカが・・」「いや、日本だって・・」「いやいや、メディアなんてそもそも・・」「テレビの時代はもう終わってて・・」などなど、色んな声があるだろう。

想像してみる。

自分がもし、小さいころから、政治的に情報が極めて厳しく統制された場所で育ったとしたら、果たして今のような発想をする自分は存在しているだろうか。そして、もし、正しいと教えられてきたことに少し疑問を抱いたとしても、欧米の悪口をずっと耳元で囁かれている時に、欧米から自分の国を批判されたら、ひょっとしたら、むきになって反論したりしてしまうかもしれない。そうでなくても、怖くて何も言えないかもしれない。

だからこそ、思う。ああだのこうだの、権力に対しても、また自分とは違う思考をする人にも、何でも言える今の状況は、本当に幸せで、必要なものだ、と。

そして、やはり一番思うことは、
各国が対立しながら、したたかに、自国の利益を求めて駆け引きを繰り返している間にも、これまで普通の生活を懸命に生きていただけの人たちの命が、どんどん奪われ続けているということだ。

今苦しんでいる人たちの姿が、そのままの形で、プロパガンダの色を帯びることなく、対立する双方の人たちのもとに伝わってほしい。

彼らの「顔」と「声」を、消してしまわずに。


========
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
AJ 😀

この度、生まれて初めてサポートをいただき、記事が読者に届いて支援までいただいたことに心より感謝しています。この喜びを忘れず、いただいたご支援は、少しでもいろいろな所に行き、様々なものを見聞きして、考えるために使わせていただきます。記事が心に届いた際には、よろしくお願いいたします。