一億円のマッチ(ショートショートnote杯)
「てめぇわかってんのか? お前が火をつけようとしてるそのブツは末端価格で1億はくだらねぇんだぞ! つまり今、握っているそのマッチの値段は1億だってことだ。そいつに火をつけちまおうなんて、よもやお前にそんな度胸ねぇよな?」
フチのないメガネをかけた男はドスを効かせる。しかしメガネ男の罵声に若い男は動じる様子はない。大きく一回ため息をついたかと思うと、持っていたマッチをこともなげにスーツケースに放りこんだ。
「――なにしやがんだてめぇ! 言っただろ! 1億だぞ1億! お前みたい