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苦しい、と言えない苦しさに

ごみ捨ての帰り道。


どこかから、大きな足音が聞こえた。


どこかから、ドリブルの音が聞こえた。


どこかの軒先に、スペードの7が落ちていた。


帰宅して、睡眠薬の飲み忘れに気付いた。


いいとは言えない日の始まりだった。


起きたときから、気持ち悪さのようなものがあった。


それでも、徒歩2分くらいのごみ捨て場まで、行って帰ることはできた。


ついでに、日課の短歌を詠んだり、シャワーを浴びたり、まあ、そういうこともできた。


でも、それで限界だったのかもしれない。


もう少し横になろうと思ったぼくは、また、そのまま眠ってしまった。


数時間しか寝ていない、わけでもないのに、寝不足だったんだろうか。


3時間くらい追加で眠って、また起きたときには昼になっていた。


適当に昼食を摂り、ぼくは、コーヒーの生豆の選り分けをしようと思った。


午後は、それをしばらくやっていようと、思ったのだけど。


始めて、そんなに経たない内に、血の気が引いていくのがわかった。


それ以上、座っていられなくなり、ぼくはまた横になった。


色んなことが、よくわからずにいた。


たしかに、前日は疲れていたけど。


それだけのことじゃ、ない気がした。


座っていられない、もしくは、立っていられない。


3月に、何週間もぼくを苛んでいたこと。


再来? いや、今日だけかもしれない。


あのときと違って、引っ越しのことで悩む必要はないし、静かな場所で眠れてもいる。


でも、ときどきはあることなのかもしれない。


それからぼくは、立ち上がってみたり、座ってみたり、やっぱりだめで、横になった。


少し元気になったところで、また生豆の選り分けをした。区切りがついたところで、休んだ。


そのまま、朝まで眠ったらしかった。


何度か、ぼくの部屋の除湿機が鳴いているのを聞いた。


満水になっているから、中身を捨ててほしいと。


何回鳴っただろう。


気付けば、朝になっていた。


ぼくは今、不調なのか、そうじゃないのかも、わからない。


肩が痛む。


鮮明な夢を見たことを覚えている。


眠りが浅くなったのは、除湿機のせいだろうか。


それとも、他のことが原因だろうか。


わからない。


何もわからない。


苦しさに鈍くなっているのか、本当に苦しくないのか。


本当は、心当たりがあるのを、知っている。


でも、見て見ぬふりをしている。


悪い人は、ここに、だれ一人として、いないんだから。

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