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なにもできないんだろう、と思ったから

限界が来たらしかった。


ぼくの生活が、少しだけ忙しくなって、1週間。


一昨日は、朝、起き上がれなくなって。


それでも、昼になる前から、就寝するまで、作業ができた。


でも、昨日は、目が覚めてからずっと、頭から毛布をかぶっていた。


そうしないと、耐えられなかった。


週に一回の、ボランティアの日だった。


欠席するときは、特に連絡はいらない。


でも、ボランティアが始まる時間まで、どう考えても間に合わなくなる時間まで、ぼくは息がつまりそうだった。


三度寝なのか、四度寝なのか、自分でも、眠っているのかどうか、わからなくなった。


11時になるころに、ぼくはようやく、毛布から顔を出した。


見た夢は覚えていた。だから、少しは眠ったんだろう。


いつも通り、ろくでもなかった。知らない人を、ころそうとしていた。


枕元に置いていたアクエリアスを、気の済むまで飲んだ。飲み干した。立ち上がれるくらいには、回復した。


ぼくはふと、頭の中が空っぽになっているのに気付いた。


この数日は特に、自分が予定立てていたことで、頭をいっぱいにしていたのに。


なにを考えればいいのかわからないくらい、その空白は大きかった。


やらなければいけないことを、忘れたわけじゃない。


ただ、考える、ということが、その日は出来ない気がした。実際に、その通りになった。


それから、だれにも会わなかった。


ボランティアに行かなかったのは、だれの前でも、取り繕えないと思ったから。


はっきり言えば、自分を知っている人にも、自分が知っている人にも、会いたくなかった。


顔を合わせるのが、怖かった。


朝食にも昼食にもならない時間に、ホットケーキを焼いた。


そのときのぼくは、自分のために時間を使うのは、よかったらしい。


1枚が焼けると、2枚目を待つことなく、床の上に座り込んで食べた。


フォークだけだと、ホットケーキはずいぶん扱いづらかった。


焼けたのは、全部で3枚。全部食べた。


小麦粉はうつ病によくない、という情報が頭をかすめて、すぐにどうでもよくなった。


寝巻のまま、コンタクトを着けず、メガネのまま、これからどうしよう、と思った。


過眠に値するほど眠ったから、眠気もない。


そういえば、灯りも点けていない。点けないまま、過ごすことにした。


ただ、なにも考えられない頭だから、なにもできないんだろう、とは思った。


すぐに手を付けなければ間に合わない、というものは、たぶん、ないはずだった。


ぼくは、自分で気付くまで、レースのカーテンに遮られた窓の外を見ていた。

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