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息をひそめて生活することも、

家にいたくなかった。「いたくなかった」といっても、パートナーは仕事へ出かけて、ぼくは一人でいたのだけど。それでも、なにかに急き立てられるように、外へ出た。吹雪いていたけど、なるべく晴れている隙を狙って。


朝から、なんだか嫌な感じがしていた。予兆というか、なんと言えばいいのか、わからないけど。理由もないのに、ひどく気分が悪くなる。本当は、あるんだろうけど。たぶん、一つじゃなくて。いろんなものが積み重なって、強固な層になって、ぼくを襲う。


少々遠かったけど、顔見知りになったコーヒー屋さんの出店へ行った。覚えてもらえていて、うれしい。人と話せて、うれしい。コーヒーを片手に、ここ最近、誰ともろくに喋っていなかったことを思い出す。(パートナーとも、数日会えていなかった。)飲食物の飲み込みが少しだけむずかしくなるくらいに。


天気はよくなっているのか、悪くなっているのか、わからなかった。気分を持ち直せたと思ったけど、またすぐに落ちた。「家にいたくない」とは、もう思わなかったけど。それで、なにをしたんだっけ。上手く思い出せないな。


ああ、そうだ。(思い出すのに、10分かかった。)見知らぬ人が、インターフォンを押された。空き部屋のはずの隣室が、がたがたいっていたので、新しい入居者だと思ったんだった。開けてみれば、だいぶ怪しい人で、保険の勧誘だったみたいだけど。早々にドアを閉めた。


ただ、空き部屋が空き部屋じゃなくなったのは、本当だったらしく。ぼくは憂鬱になった。何年か前だったら、関心を示さなかったのに。もう片方の隣人が、時々夜になるとうるさいから。(一昨日もひどかったので、通報しないといけなかった。)ただでさえ、よく眠れないのに。少なくとも、昨日新たな入居者はうるさくなかった。それが普通。だと思いたいけど。


食欲がなかったり、いつまでも疲れていたり、気分がひどく落ち込んだり。これは、なんだろう。天気が悪いから、気圧に振り回されているんだろうか。もしそうなら、手の施しようがない。ひどい。息をひそめて生活することも、ままならないなんて。


穏やかに生きたい。静かに生きたい。ぼくの喉を握り潰すような事から離れて。叶ったかと思えば、突然突き落とされたり。疲れるな。春になれば、もろもろ解決するかな。と思って、春を待っている。

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