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少しでも、ぼくが苦しまなくなるように、

引っ越すことにした。


早くて夏、遅くて秋。


知人や友人とはお別れ、にはならない。


同じ市内に引っ越すから。


今より不便で、今より静かなところ。


いつかは引っ越そうと、もともと考えてはいた。


先月、尾道に滞在していたときに、ふとしたきっかけで、借家という選択肢もあることに気付いた。


あとで調べると、田舎だからなのか、今のアパートとほとんど変わらない家賃の借家が、結構あった。


(安いということは、古くて立地に恵まれていない、ということなのだけど。それは承知の上で。)


いろんな偶然が重なり、1年以内の引っ越しを、パートナーと決めた。


一昨日、今のアパートを解約するために、6年前にもらった契約書を引っ張り出した。


解約するときにすべきこと、費用……。


どのみちお金はかかるけど、ぼくを憂鬱にさせたのは、それじゃなかった。


6年前。


就職がきっかけで(その年の内に辞めることになる)住むことになったアパート。


働き始めだし、連帯保証人はいる。


名前を見ただけで、嫌悪が噴き出す。


色んな契約書に、ぼくの名前と同じくらい頻出する。


目を通す必要があるとはいえ、ぼくは、それで気分が沈んでしまった。


でも、考えて、考えたくもないのに考えて、こう思った。


これで、あいつらに繋がる糸は、切れる。


完全に、ではないかもしれないけれど、かなり太い糸だ。


少し前は、思い出の品を一方的に送り付けられた。


アルバムから、中高生のころにもらった賞状、母子手帳まで入っていた。


全て捨てた。気持ちが悪かった。


それと、パートナー経由で知ったけど、叔母達からもらった結婚祝いを預かっていたらしく、それも入っていた。お返しも、こちらで済ませたと。


結婚したの、何年前だと思っているんだ。恩に着せたつもりか。お返しとか、ぼく達がするべきなのに。余計なことをしやがって。


母子手帳を目にしたときは、気持ち悪ささえ覚えた。


パートナーに送られたメールには、他の兄妹にも同じように送った、と書いてあったらしい。言い訳がましい。


ぼく達にとっては大金の結婚祝いは、全部募金した。


実際に物件を見に行って(内見じゃなく、どの辺りにあるのか確認しただけ。)近所付き合いとか、ぼくを苦しめそうなことが、頭をもたげたけど。


今のアパートの解約手続きを確認するだけで、一刻も早く引っ越したくなるなんて。


とにかく、珈琲屋の出店の傍ら、少しずつ準備を始めている。


少しでも、ぼくが苦しまなくなるように、祈りながら。

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