あたたかくなってきたことを、「春らしい」と言うなら、春らしい。
けれど、肌が不快になるくらいには、暑かった気もする。
格好のせいかな。
春の日に、冬の格好……。
昨日はそんな日だったけど、今日はどうだろう。
春らしいのか、冬らしいのか。
アルネは、少し肩をすくめて、それから小さく笑った。
ぼくにしか見えない、ぼくだけの女の子。
アルネの言う通り、甘いものがあるから、飲みものは苦いコーヒー。
といっても、ぼくが淹れるコーヒーは、そんなに苦くない。
苦すぎるのは、ぼくも苦手な方だ。
口当たりがすっきりしているくらいがいい。
ぼくの好みのコーヒーと、それから甘いものを、アルネに差し出す。
まだ肌寒いけど、これからだんだんあたたかくなって、陽も出てくる。
バレンタインという日には、丁度いいのかな。
まだ冷えている体をあたためるように、ぼくは、時間をかけてコーヒーをすすった。