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カフェで柏手を打たないでください。

二礼二拍手。


そして、一礼。は、していなかったと思う。


その人とぼくの間は、1メートルも離れていなかった。


なにせ、混雑したカフェだったから、席についても、ソーシャルディスタンスをたもてなかったのだ。


ええ。神社じゃなくて、カフェでの話です。


今どきは、オンライン参拝とかあるのか。


と思ったけど、そういうことじゃないらしかった。


学生じゃなくても、タブレットを開いて勉強している人は、珍しくないのだけど。


カウンターの上で広げている中に、一見スピリチュアルな本もあり、セキュリティ意識のかけらもなく、傍からよく見えるタブレットには、ビデオ通話と思しき画面が見えた。


(覗くつもりはなく、席につくときに、うっかり見えてしまった。本当に。)


とはいえ、その人がなにか、ことばを発することはなかった。


小声で、ぶつぶつとなにかを呟くことも。


(それとも、ぼくがイヤホンをしていたから、なにも聞こえなかったのか?)


ただ、二礼二拍手が、計3回くらい、はっきり覚えていないけど、それくらいくり返された。


ぼくは思った。


なにも、こんなに混みあったカフェでしなくても。


なにをしていたかは定かではないけど(あと、お祈りには詳しくないけど)もっと静かで、気を落ち着ける場所でするものじゃないだろうか。


けれど、こうも思った。この人の自宅には、ネット環境がないんじゃないかと。それで、フリーWi-Fiのあるカフェへ足を運んだのだ。ビデオ通話が必要だったなら、なおさらだ。


気を落ち着かせるのだって、どこでもできる人は、できるのだし。


まあ、周りにたくさん人がいる中で柏手を打つのは、いただけないと思うけど。


と、今まさに隣にいるおじさんについて考えていたところ、こなすべき一連の流れが終わったらしい。


おじさんの緊張がとけるのが、ぼくにもわかった。もちろん、そちらを向いてなどいなかったけど。


終わったのかあ、とぼくが呑気に思っていると、おじさんはスマホを乱暴に放り投げた。


ぼくがぎょっとして、少しだけ隣を覗き見ると、スピリチュアルではない小説が、開いたまま伏せられていて、さらにその上には、充電ケーブルなどのコード類が乗っかっていた。


こころなしか、お祈り? を終えた途端、おじさんの所作がひどく下品に見えた。


神さま、もしくは、神さまと繋がっている人? が目の前からいなくなった途端、ふるまいが雑になるのは、あまりに見苦しいと思った。


それが、ぼくの感想としても。


カフェで柏手を打つのは、やっぱりよくないんじゃないかと思った。


もし、カフェで柏手を打つ予定のある方は、周囲に配慮しましょう。


みなさん、よいお年を。

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