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ぼくが悪夢を見なくなったのは、

1週間か、もしくは、それ以上経っただろうか。


寝つきがよくなって、あまり悪夢を見なくなった。


目を覚ましたときの、顎の痛みもない。歯ぎしりも、していないはず。


心当たりはある。近々、引っ越すからだ。


近々、といっても、半年かかるか、かからないか、くらいだけど。


でも、「いつかは引っ越そう」と考えていたのが、ふとしたきっかけで、具体的な日付を持つ「現実」になった。


市内だけど、市街地から外れた、静かなところ。


なにがいいかといえば、これで、「あいつら」が突然自宅まで来るとか、そんな被害妄想に襲われなくてもいいこと。


(義父母が、新しい住所を勝手に教えなければ、だけど。)


ぼくがここで生活をし始めたときはひとりで、連帯保証人も「あいつら」で、解約のために契約書を見返していると、吐き気がした。


でも、引っ越せば、その必要もなくなる。「あいつら」には、ぼくの新しい家を教えない。


新しい家(にしたい物件)は、ずいぶんわかりにくいところに建っているから、それもぼくを安心させる要因だった。


携帯番号を着信拒否することはできても、自宅まで来ることを、操作一つで拒否することはできないから、今までずっと不安だった。


それが、完全に安全といえないまでも、夢見がよくなるくらいに、ぼくは安心を獲得できた。


引っ越し準備、というより、自宅にあらゆるものの整理を、少しずつ進めている。


予定よりずいぶん早いけど、ぼくもパートナーも、体調を崩しやすいから、計画通りにはいかない気がして。


その間にも、パートナーは仕事があるし、ぼくも以前より、珈琲屋としてすることが増えたし、ほどほどに忙しい。


ほどほどでも、特にぼくは、慣れていないから、頻繁に休まないといけない。


それでも、2日がんばったら、1日は寝込んでしまうのだけど。それはもう、しょうがないことにしている。


結婚したとき、名字をパートナーに合わせて。


もちろん、本籍地も。


それだけでも、ぼくはほんの少しだけ、解放された気になった。


全身から力が抜けるような安心も、長くは続かなかったけど。


今度は、住まいも変える。「あいつら」には知らせずに。


ぼくが、最も憎んでいる他人。


(血が繋がっているとか、知らない。自分以外の人間は、みんな他人だ。)


引っ越しが終われば、もっと穏やかに暮らせるだろうか。


そればかりは、終わってみないとわからない。


から、ぼくは今日も、荷造りをする。気が済むまで。

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