悲しい、悲しい、すごく悲しい、の朝
痛い、痛い。
EVEを飲もうか、どうしようか。
あまり、逐一、飲みすぎるのも、よくない。
そう思っても、いつまでも引かない痛みに、結局飲むことになる。
予定をつめ込みすぎた日の終わりは、大抵そうなる。
痛い、痛い。
痛くて、ぼんやりする。
予定がつめ込まれていた。
だから、それほど、色んなことがあったはずだ。
でも、そんな日であればあるほど、ぼくは、何があったのか、思い出しにくくなる。
まったく思い出せないわけじゃない。たぶん。
ただ、思い出すのに、時間がかかる。
ぼくの脳みそは、情報処理が苦手。
そのことで、一つ、思い出した。
ぼくは、ときどき珈琲屋になる。
だから、営業許可を取っている。
ただ、少し前に引っ越したから、住所変更の手続きをしないといけないことを思い出した。
受付で書類を渡され、職員の人に言われた。
まず、〇〇と〇〇を書いて、ここは××と書いて、こことここは書く必要がなくて……。
一度に一気に言われ、ぼくの脳みその処理速度も、一気に落ちた。
氏名を記入するのも、躊躇するくらいだった。
ぼくの戸惑いが通じたのか、結局担当の職員に、一つ一つ見てもらいながら書いた。
ゲームでよくある「スタンする」って、こういう意味なんだろうな、と頭の片隅で思った。
本当に、一度に一気に情報を流し込まれると、脳みそがそれらをシャットアウトしようとするのがわかる。ぼくの意思に関係なく。
その後、通っている古本屋に寄った。
珍しく、漫画が置いてあるのを見つけた。
1、2話を、ぱらぱらと読んだ。
難病で、けれど障害年金をもらうほどではなくて、でもフルタイムで働ける体ではない女性が主人公だった。
医師に、年金をもらうほどの症状じゃないとか、頑張ればフルで働けるだろうとか、年齢のことまで言及して、婚活とかですかね、とか言われていた。絵に描いたようなやぶ医者だ。
ぼくのかかりつけ医はやぶ医者ではないけど、別の病院で、やぶ医者に初診で嫌みを言われたことはある。
いるんだよ、本当に。こんな医者は。ぼくは、運がよかっただけ。
障害年金をもらえるのも。その等級が、数年前に上がったのも。働いていないのに(ときどき珈琲屋になるとはいえ)養ってくれるパートナーがいることも。
運がいい。
数年前から。
30年近く生きてきて、ようやく、運がよくなった。
(それでも、悪い運に苛まれることは、今でもある。)
今のぼくは、珈琲屋でもっとできることはないかと、模索している。
(とりあえず、豆売りのパッケージやショップカードのデザインは考えた。)
でも、他の珈琲屋と同じようには働けないんだと思うと、悲しくなる。
なんだか、すごく悲しい。
今日は、ひとりでいようかな。
そんな気になる。
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