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ぼくには、割れた蓋しかない

ふと、今日マチ子のツイート(ポスト?)が目にとまった。

「今日は沖縄慰霊の日です。いまも考え続けています。」


自作の『cocoon』の書影と共に、つぶやいていた。


昨日、ぐったりしていたぼくでも、鮮明に蘇った。読んだときの記憶が。


ぼくは、それを手にしたことがある。


ただし、ぼくの本じゃない。


はじめて行って、それが最後になったカフェに、置いてあった。


(何年も前に閉店した、と記憶していたけど、調べたら、まだあった。)


ブックカフェ、というわけではないけど、棚にそれなりに並んでいる中で、背表紙だけを見て、なぜか引き抜いた。


主人公は、沖縄の女学校に通う女の子。


学徒動員。


「今日は沖縄慰霊の日です。」


そういう話。


漫画であることもあり、ぼくはその場で、一気に読み終えた。


はじめて行ったカフェで読むものじゃないな、と思ったりした。


何年も前で、その一度きりしか読んでいないのに、話の筋を、驚くほど覚えている。


それほど、衝撃だったんだと思う。


かわいらしい絵柄では、拭いきれないほどの、現実。


他人のことは、なかなか覚えられないくせに。


本のことは、よく覚えているんだな。


内容が内容だったのも、あるけど。


昨日のぼくは、ひさしぶりに、起き上がれなかった。


一昨日、珈琲屋になって。


疲れるのは、いつものこととして。


思うより疲れてしまったのは、雨のせいだろうか。


昼すぎに、それ以上眠れなくなって、起きた。


夕方になっても、ぐったりしていた。


もう一眠りしようにも、なかなか眠れない。


今日マチ子のツイートで、ついでのようにフラッシュバックした、あのころのこと。


あのカフェで、あの本を読んだ、当時のこと。


まだ、味方がだれもいなかったころの。


引っ越してしばらくは、安眠できるはずだった家も、近ごろは、そうでもなくなってきた。


また、大家や不動産にいじめられたから。


不動産はともかく、大家の自宅は目と鼻の先にあるから、精神衛生上よくない。


視界に入らなくても、すぐ近くにあるという事実だけで、自分が疲弊していくのがわかった。

何もかもをよくするはずだったのに。


大したことない話だろう。


ぼくには、大したことある。


そういえば、『関心領域』が公開されて、少し経ったあとも、今日マチ子のツイートを見た。


彼女は、「アノネ、」という漫画の一部を公開していた。


最初の頁でわかったのは、『関心領域』を観た直後だったからだろうか。


その話が、強制収容所での人達を描いているのだと。


(『cocoon』も『アノネ、』も、戦争フィクション。)


人から見たら、小さかったり、大きかったり。


自分がふり回されていることだけ、わかっている。

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