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まともではなくなっていく一方、

「たれみみくんの耳は、どうしてたれているの?」


そう、だれかが訊いた。


昨日だったか、一昨日だったか、それより前か。


もしくは、そんなことを訊いた人なんて、いないのか。


たれみみくんは、うさこちゃん(ミッフィー)の絵本に登場するキャラクター。


片方の耳がたれているために、「たれみみくん」と呼ばれている。


もちろん、彼には彼の名前があり、本当はそう呼ばれたいと思っている。


「たれみみくんの耳は、どうしてたれているの?」


そんな台詞は、絵本の中にはない。


ぼくの周りに、訊いてくるような人はいない。


(まず、彼を知る人が数少ない。)


じゃあ、夢の中か。


眠りが浅いせいなんだろうか。


夢の自分。


現実の自分。


記憶が混ざり合って、どちらがどちらだったのか、わかりにくくなっている。


そういうこと?


ぼくが見る夢は、大抵ろくでもない。


(ろくでもなくない夢の方が少ないかもしれないけど。)


近ごろは、それに加えて、なぜだか、見覚えのある夢が多くなった。


見覚えがある、ということは、以前も見たということだけど。


じゃあ、その以前がいつだったのか。


そもそも本当に、それは見たことのある夢だったのか。


どれも思い出せない。


よく眠れていないせいなんだろうか。


ぼくの頭は、ますます混乱を極めている気がする。


ときどき、パートナーに確認することもある。


ぼくが、実際にこんなことを言った(もしくは、言われた)のか。


大体は、「言われてない(言ってない)」と返ってくる。


だから、ぼくの記憶は本当に信用ならない。


よく眠れたら、記憶があやふやになることもないんだろうか。


よく眠れることなんて、この先もないんだろうけど。


じゃあ、ずっとあやふやなままなのか。


むしろ、悪化する一方なのか。


年老いたら、だれでも記憶に自信がなくなるものかもしれないけど。


そういうことじゃないくて。


ぼくの頭は、ただでさえ「まともじゃない」と悪態をつかれるばかりだったのに。


自分でも気付かない内に、もっと「まともじゃなくなる」んだろうか。


怖いな。


ひとりでいるのは、好きだけど。


ひとりになるのは、苦手みたいだ。


この数十年で、学んだこと。


でも、こんなに面倒でも、生きていけていることにも、少し驚く。


不安が、なくなることはないけど。


不安のままでもいいか、とも思う。


自分でも、よくわからないけど。


たれみみくんの本名?


彼の名前は、ダーンです。

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