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一昨々日にいるぼくと、『ファミレスを享受せよ』

終わってしまえば過ぎた時間は
厚みを失っていますから……

『ファミレスを享受せよ』より

先週末に、人前で珈琲を淹れた。


珈琲屋として。


その日は、ぼくが知っている人しか来なかったし、忙しいわけでもなかった。


それでも、ぼくはずいぶん疲れてしまうらしい。


らしい、というか、実際にぐったりするほどだったのだけど。


昨日は、月曜日か。


珈琲屋になったのは、金曜日で。


ずっと、眠気にのしかかられている。


出店の翌日は、こんこんと眠り続けたけど。


3、4日経った今でも、引きずりすぎなんじゃないか、疲労を。


気力も体力も、常に底をついているせいなんだろう。と思う。


それはそれとして、昨日のぼくはPCを立ち上げた。


ゲームをするために。


PCゲームとか、いつぶりだろう。


『ファミレスを享受せよ』


気になっていたタイトルではあった。


永遠のファミレスで、永遠に近い時間を過ごす。


ファミレスの名前は、「ムーンパレス」。


それは、プレイしたくなるだろう。


推定プレイ時間は30分くらいらしいので、途中止めにしているゲームがいくつもあるぼくでも、たぶん大丈夫だと思ったのだ。


(結局、2時間はかかってしまったけど。)


ゲームを始めてすぐに、ぼくは、永遠のファミレスの住人になっていた。


ほとんどが見たことのない飲みものが並ぶドリンクバー。


ぽつりぽつりといる先客、もとい先住民。


本もスマホもないから、暇ではあるだろうけど。


実際のぼくも、閉じ込められてしまいたいな、と思った。


もし、本当にそうなったら、気が狂ってしまいそうだけど。


でも、ひとりでいるわけじゃないから、そんなことにはならないのかな。


ファミレスの外には出られない。


出られたとしても、外は、天地のわからないほどの暗闇。


それから、現実のそれとは、どこかが違う月。


疲れが残っているくせに、マウスをかちかち鳴らしながら、ゲームを進めた。


永遠のファミレス。


時間の概念はない。


時間の厚みを感じられない。


すべて過ぎ去ってしまえば。


そんなことを言っていたのは、誰だったか。


ここで珈琲を淹れるのは、暇つぶしになるのだろうか。とか。


ドリンクバーがあるから、その必要はないか。そもそも、豆も器具もない。


エンディングを見届けても、現実はまだ昼だった。


眠気は最高潮に達していた。


早く夜になってほしいぼくは、しばらく横になった。


珈琲豆を詰めた瓶のそばで。


薫りのせいで、眠ってもいないのに、意識が途切れた思いがした。


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