「苦しいことばかりじゃなくて、よかった」
自分で自分を見て、驚いた。
のが、1日に2回くらいあった。
3回もあったかもしれない。
顔を洗うとか、明確な意思を以って、洗面台の前に立ったのだけど。
どうしてなのか、驚いてしまった。
自分で思うより、隈が濃くなっていた。
1ヶ月前に比べたら、ずいぶん眠れているはずなのだけど。
隈は、寝不足だけが原因ではないらしいけど。
原因がなんであれ、疲弊していることを、物語っているようだった。
昨日は、パートナーと、水木しげる記念館に行った。
リニューアルオープンしたから、行ってみたいね、とは、話していたのだ。
ぼくは、忘れていた。
個人の記念館なのだから、発表された作品群だけじゃなく、その個人の歴史を辿ることになるのだと。
水木しげるは、20代のころ、従軍した。年齢を考えれば、当然だ。
当時のことを、色濃く説明した展示室があった。
ぼくは、ここ数ヶ月で、『関心領域』を観たり、ナチス関連の書籍を読んだりしていた。
(数多ある戦争の中でも、より学ぼうとしているのは、差別が絡んでいるからだろうか。)
水木しげるは、奇跡的に生き残った。
ぼくは、『夜と霧』を思い出していた。
あの著者もそうだった。
奇跡は一つでは足りない。
奇跡がいくつも重ならないと、生きて帰れない、そんな世界だった。
ミュージアムショップに辿り着くころには、すっかり疲弊していた。
美術館や博物館でも、いつもそうなる。
ぼくは、たくさんの情報を、一度に摂取して、一度に処理できる能力がない。
だから、1日の内に、多くの経験をすればするほど、上手く日記が書けない。気がする。
(読書感想文も苦手だけど、そういうところから、端を発しているんだろうか。)
ぼくは、展示を観賞しながら、SNSの対立を思った。
特に今は、都知事選が終わったばかりで、荒れている。のを、よく目にする。
ぼくの中で、徐々に渦を巻く感情。
何を思えばいいのかも、わからなかった。
帰宅すると、まだ時間も早いのに、横になっていた。
ぼんやりしすぎて、何かをするどころじゃなかったのだ。
眠ったり、眠らなかったりして、気付けば暗くなっていた。
少し元気になったぼくは、パートナーにコーヒーを淹れた。
パートナーは、笑ってくれた。
苦しいことばかりじゃなくて、よかった、と思った。
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