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22時、ファミレス、『ふたりの証拠』

昨日じゃなくて、一昨日の話をしようと思う。


そっちの方が、話しやすい気がするから。


一昨日の夜のぼくは、とても不安定だった。


いつも不安定なことに変わりはないけど、拍車をかけて。


(昨日の朝投稿した日記は、一昨日の夜に書いたもの。不安定の極み。)

それを思い立ったときには、22時が近かった。


ぼくは、ひとりになりたかった。


だれかがいても、だれもぼくを知らない場所に行きたかった。


『ファミレスを享受せよ』というゲームをプレイしたばかりだったのもあり、ファミレスに行こうと思った。


パートナーは、止めなかった。


こんなとき、止めないでいてくれることが、どんなにありがたいか。


自転車で15分くらいの距離に、ファミレスはある。


24時間営業ではないけれど。


調べてみると、0時までだった。


2時まで営業のファミレスもあったけど、たぶん、0時までには帰る気になるはずだ、と思った。


日中よりはあたたかい格好を選んだけど、それでも少し寒かった。


こんな時間から出かけることは、ぼくの場合、まずない。


商店街は人気がなく、灯りも少なく、薄暗いと暗いの中間くらいの明るさ。


それでも、スマホのレンズを通してみると、肉眼よりずっと明るく見える不思議。


しばらく静けさを堪能して、目的地のファミレスへ。店内を見回すと、客はまばらだった。


ドリンクバーだけ注文するのも、はじめてだった。


ドリンクが30種類以上あるらしい。のも、はじめて知る。でも、ぼくは決まったものしか飲まない。


カルピスを汲んできて、アゴタ・クリストフの『ふたりの証拠』を取り出した。半年以上前に読了した『悪童日記』の続編。


イヤホンを着けて、これで、ぼくはようやくひとりになれる。『ファミレスを享受せよ』のサントラをループ再生する。


『ふたりの証拠』は、『悪童日記』と変わらず、なにもかも他人事のような、淡々とした語り口が心地いい。


ぼくはまだ不安定だったけど、落ち着きも取り戻しつつあるような、そんな感覚があった。


ドリンクバーで2、3杯おかわりして、読書にも疲れて、そろそろいいかな、と思った。23時半が近かった。


アパートの駐輪場で、


自分の部屋のドアの前で、


パートナーが先に眠っている寝室の前で、


ぼくは、ちゃんと帰りたいと思えたことに、安堵した。


手だけ念入りに洗って、ぼくは珍しく、泥のように眠った。

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