しんでしまえ、と思っていた人間も、
どうしようもなかった憎しみも、
何もかも、薄れていく。
ような気がする。
憎しみも、憎んでいる人間も、なかったことにはならないし、まだいるはずなのだけど。
近ごろ、忙しいせいなのかな。
いろんなことが、薄くなっていけば、
ぼくという人間も、希薄なものになっていく。
まだわからない、といった風に、アルネは肩をすくめた。
ぼくにしかわからない、ぼくだけの女の子。
豆を挽いて、お湯を沸かして、それから、牛乳もあたためて。
いつも通りの手順と、いつも通り、じゃないかもしれないぼく。
ぼくが、ぼくのことをわからないのは、いつものことだけど。
こんなに、混乱するほどに、いろんなことがわからなくなっているんだろうか。
そう話している内に、コーヒーの熱で、だんだん目が覚めてきた。気がする。
わからないことは、減らないままだけど。
好きなことは、好きなままだから。
時間に流されないように、とどめておきたい。