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おぞましい夢は見たけれど、

虫歯になった。


夢の中で。


実際のぼくは、虫歯になったことはない。


ので、ほとんどすべての歯が腐っている様は、血の気を引かせるのに充分だった。


そしてぼくは、土のようなものを吐き出した。


それは、腐り落ちた歯、で、


そこで、目が覚めた。


目が覚める直前だったからこそ、すべての感覚が、現実のようだった。


ぼくは思わず、指先で歯列をなぞっていた。手遅れになるようなところは、なにもない。


歯が抜ける夢は、いくらでも見たことがある。


けれど、それはただ、本当に抜けるだけで。健康的な歯が、ぽろぽろと。痛みもない。


今回の夢は、ずいぶん趣きが違っていた。


あんまり同じ夢を見ると、ぼくはつい調べてしまうのだけど。それが、意味のないことだとわかっても。


結論から言えば、まあ、気分のいいことは書いていなかった。ので、なにも見なかったことにした。


歯科健診には、行きたくなったけど。

一昨日、ぼくは珈琲屋になった。


「なった」といっても、店舗は構えないし、一昨日は、知り合いの店を間借りさせてもらった。


思っていたより、訪ねてくれる人がいて、うれしかった。


思っていたより、ほとんど何事もなく、無事に終わった、はじめての珈琲屋だった。


とはいえ、ぼくはとても緊張して、とても疲れたらしい。


普段、人と関わらない時間の方が多いから、まあ、そうなる。


足の裏が変に痛んだり、腰を痛めたり、目の奥もずいぶん。痛んだことのないようなところが、痛んでいた。


それでも、精神的には、まだ元気な方だったのだけど。


おぞましい夢を見ると、いろいろ勘ぐってしまう。自分を。


疲れていたからだろう、で大体済ませられるのだけど。


歯は、大事だよなあ。歯は。


当たり前かもしれないけど。


ここ数ヶ月は、ずっと珈琲屋の準備に追われていたから、一段落ついた今は、だいぶ気が抜けている。


少なくとも、次に出店するときは、また、一から道具を揃えたり、役所に営業許可を取りに行ったりしなくてもいい。それだけでも、ずいぶん気が楽だ。


体の方は、まだ楽じゃないみたいだけど。


今日は、どうしよう。


本が読みたいかな。どこかで、ゆっくり。


ゆっくりすることを、思い出そう。


本来のぼくは、ゆっくりで、ぼんやりしているんだから。


それを忘れると、よくないことが起こるのは、知っている。


でも今、ぼくを急かす人は、誰もいない。


侮辱してくる人も。


少なくとも、今は。


何を読もう。


ぼくは、とても充たされている。

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