生きづらくってしょうがねえ
シチューに、じゃがいもを入れ忘れた。あったのだけど、忘れていた。
ほんの些細なこと。
シチューのルーを溶かしていると、ふと、肩がひどくこわばっているのに気付いた。
四六時中肩こりしているとはいえ、なんというか、尋常じゃないこり。
それは、だから、緊張していたということで。
ぼくは、うずくまっていた。台所で。
食欲が、急激に失せていくのがわかった。
なにもかもどうでもよかった。
叫んでしまいたかった。
手をかきむしりたかった。
どれもできなかった。
プライベート。
他人のそれは、ぼくにはどうでもよくて。
でも、そうじゃない人も、中にはいて。
面倒臭え。
と、大声で吐き捨てたかった。
壁の薄いアパートでは、それができない。
詮索するな。
ただの興味で。
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。
パートナーが帰ってくるころには、ぼくはすっかり憔悴していた。
変わらず、食欲はなかった。それに、動けなかった。申し訳なかった。
なにか口に入れないと、より落ちていくのはわかっていた。パートナーに、シチューだけよそってもらった。具なしで。
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。
ぼくが。
ぼく自身が。
なんで、口を滑らせてしまったんだ。なんで。
どうせ、向こうは気にしていないだろう。でも、ぼくは気にする。本名を口にした時点で。忌々しい、ぼくの本名。
しねばいいのに。ぼくが。
ぼくは、平和に終わる日が、少ない。
悲しい。
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