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『闇鍋宇宙』/掌編小説

つまみ上げたのは土星だった。

ワッカの部分が箸に引っ掛かっている。

「月が良かったなぁ。あれは黄色くてモチモチしていて旨いんだ。」
文句をいいながら、土星を小皿の塩にちょちょっと付けて口にほおりこむ。

サク、サク。
「意外にいけるわ。もっと土っぽいかと思った。」

次の宇宙人が鍋をつつく。

青と緑がきれいな惑星だ。
「わ!地球はナシで。水っぽいし、なんだかしょっぱいし、森が喉に刺さって痛いのよ。」
「しようがないなぁ。」
地球はそのまま隅に捨てられた。

闇鍋大会は続く。
「げ、ブラックホールだ。これ、食べた気がしないんだよ。」

「冥王星、おいしい。」


次の日から、地球では月が見えなくなった。

他の惑星がすべて消えていることに科学者たちが気づくのは、まだ先のことだった。


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