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役員報酬の基礎知識の復習

こんにちは、公認会計士の三上光徳です。

本日は『役員報酬』の基礎知識をあらためて説明したいと思います。





役員報酬の支給は税法上、制限がある


役員報酬とは、会社役員に支払われる報酬です。そして、その役員報酬には
税法上、明確に制限が設けられています。

それはなぜでしょうか?



例えば、あなたが下記の状態だとします。
そのとき、役員であるあなたは、決算月である3月の役員報酬としていくらもらうか?を考えてみてください。


<前提条件>
・役員報酬の支給に、税法上、何らの制限も設けられていない。

・毎月の役員報酬として、1ヵ月50万円を受け取っている。

・当社は3月決算である。決算前の2月末時点において、当期の税引前利益として800万円が見込まれている。



このまま予定通りに3月末を迎えた場合、税引前利益800万円となり、
法人税・住民税・事業税、合算の税率が約25%とすると、
800万円×25%=200万円 の税金が発生することになります。



そこで、この200万円の税金を抑えたいと思い、3月の臨時役員報酬として
追加で800万円を支給したらどうなるでしょうか?

税引前利益は、
800万円-臨時役員報酬800万円=0万円
となり、法人税などの税金はゼロとなります。
(但し、受け取った役員には臨時役員報酬800万円に個人所得税が課されます)



では、このような役員報酬の支給は実際には認められるのでしょうか?

当然、答えはノーです。
(厳密には、支給すること自体はできますが、税金計算上の損金(費用)にすることはできません。)


上記の例のように、自由に役員報酬を支給できてしまうと、税金逃れを意図した利益操作が行われてしまいます。それを防ぐために、税法上は明確に制限が設けられているのです。



支給可能な役員報酬として、2種類を理解しておく


支給可能な役員報酬としては3種類あるのですが、現実的にはそのうち2種類を
覚えておいてください。
まずは、3種類を列挙しておきます。

------------------------------
■定期同額給与
■事前確定届出給与
■利益連動給与
------------------------------


このうち、3番目の利益連動給与は、現実的には上場会社等でなければ
支給が難しいため、本日の説明は省略します。



■定期同額給与


定期同額給与は、毎月、定まった一定額を支給するもので、最も一般的な役員報酬の支給パターンといえます。

定期同額給与は、事業年度開始の日から3か月以内に株主総会で決定される必要があります。税務署への届出等は、不要です。


■事前確定届出給与


事前確定届出給与は、役員に支給する賞与(ボーナス)のイメージです。
こちらに関しては、税務署への事前の届出が必要となります。
そして、その届出期限は以下の①②の内、いずれか早いほうとなります。
------------------------------
①株主総会の決議から1ヵ月以内

②事業年度開始の日から4か月以内
------------------------------
つまり、事業年度の最初のほうの時期に、支給金額の届出を行っておく必要があるのです。


また、注意点としては、届け出た金額の100%を支払えば、税金計算上の損金(費用)とすることができますが、その一部しか支払わなかった場合など、届け出た額と異なる額を支給した場合には、損金(費用)にすることができません。
例えば、事前確定届出給与として「100万円」を届け出ていた場合に、
実際には60万円しか支給しなかったケースにおいては、その60万円は税金計算上の損金(費用)にすることはできないのです。


となると、現実的には100万円を支払う or 支給ゼロとする の選択を迫られることになるのです。しかし届出をしておかないと支給する余地が一切なくなってしまいますので、事業年度の最初の段階では届出を検討しておきましょう。


三上光徳

アガットイノベーション



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