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退職を驚かない友達に救われた話。【人間失格/太宰治】
会社を退職することは、現在同棲している彼以外には誰にも話していなかった。
親ですら、事後報告になってしまっていたくらいだ。
理由はもちろん、「引き止められる」と思っていたからだ。
ある日、引っ越しがあることを友達に伝えると、
「え?引っ越すの?会社辞めた?(笑)」
そう、その通りなのだ。なぜばれた?
辞めたことを伝えると、
「え!おめでと!これからゆっくりできるし、近いうち遊ぼ!」と。
正直、「あれ?驚かないの?」
と思った。
その後、他の友人に会社を辞めたことを言っても、
誰一人として、驚かないのである。
むしろ、「やりたいことやれるし良かったじゃん!」と。
そうか、そんな考え方があったのか、と。
生きにくいと感じていたこの世の中は、自分の思い込みだったのかもな、とか考えた。
人間失格
新卒1年目に適応障害になり会社に行けなくなった自分を、
とにかく責めていた日々。
「どうしてみんなのように上手く日々を過ごせないのだろう?」
「社会人をやっていけない自分は、社会不適合者なのだろうか?」
そんな思いを抱えながら、引っ越しを機に本棚を整理していた時、
ふと見つけた太宰治の「人間失格」。
遠い昔に読むことを挫折して、完全に積読と化していた本だった。
今の自分はまさに「人間失格」ではないだろうか?
そんな自暴自棄な考えから、本を手に取った。
「世間というものは、個人ではなかろうか」
ハッとさせられた。
「退職したらいけない」、「正社員じゃないとだめだ」
そもそもそれって誰が決めたんだ?
自分が、自分を許していないだけだったんじゃないだろうか。
実際、私が退職することを引き止める人はいなかった。
むしろ「第二の人生を楽しんで」という意見の方が多かったのだ。
きっとこれまでも、自分の頭で自分の選択を否定してきたのだろうな、と。
行きたい方向に進む自信がなかったのだ。
退職を決めたなら、あとは前に進んでいくだけだ。
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二度とないチャンス
とはいえ、お金の不安からやみくもに正社員の募集を見ていた時もある。
そんな時に同棲をしている彼から言われた一言に、またしてもハッとさせられたのだった。
「今は二度とないチャンスだよ。自分が納得のいく仕事が見つかるまで、
考え抜いて、決断しなよ」と。
私はまたしてもお金の不安から、想いのない仕事をしようとしていたのだった。
これでは新卒での就活と何も変わらないじゃないか。
今はこのチャンスを無駄にしないために、「自分の理想」をできるだけ純度高く描くことを心がけている。
理想がリアルに描けていればいるほど、理想を現実にすることができる気がしているから。
真夜中に、こっそり決意表明をして、ライターネームを名前に変えた。
少しずつ、理想に近づくために。
後戻りはできない、のではなく、しないのだ。前を向くために。
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